読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1296915
0
本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。(大和出版) “患者の気持ちがわからない”お医者さんに当たらないために
2
0
0
0
0
0
0
雑学
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
2章 トンデモ医療の実態とカラクリ

『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。(大和出版) “患者の気持ちがわからない”お医者さんに当たらないために』
[著]大塚篤司 [発行]PHP研究所


読了目安時間:34分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


トンデモ医療を行う人たち


 トンデモ医療というのは、科学的に根拠がなく、効果があるどころか健康被害が起きる可能性のある医療行為を指して使います。


 2019年、血液クレンジング療法をトンデモ医療だと声をあげた医療従事者によってちょっとした社会問題となりました。



 血液クレンジング療法とは、血液を100㎖ほど採取してオゾンと反応させた後、再び体の中に戻す医療行為です。


 この医療行為に保険適応はなく、すべて自費で行われます。ぼくが調べた限りでは12万円の値段で行っている施設が多いようです。


 血液クレンジング療法は、インスタをはじめとするSNSで有名人が何度も宣伝し、ステマ(ステルスマーケティング)ではないかと指摘を受け、いわゆる“炎上”を起こしました。


 血液クレンジング療法のために採血した血液は、どす黒い赤色です。これがオゾンを通すと真っ赤になります。見た目のインパクトがとても強い医療行為です。


 しかし残念ながら、医学的に効果は証明されたものではありません。


 体がラクになったという声もネットでは見かけますが、体験談だけでは医学的に証明されたことにはなりません。


 おそらく、効いたように感じるプラセボ効果か、血液クレンジング療法中に体を休めることによる効果だと、個人的には思っています。


 血液クレンジング療法は、多くの施設で行われているようです。


 では、どうして医学的根拠を出そうとしないのでしょうか。


 当時取材したBuzzfeed Japanの記事では、

「副作用の報告もない安全な治療。(科学的な根拠を示す)臨床試験は費用がかかるし、世間の『オゾンは危険』という思いこみがあるからできない」


 と、血液クレンジング療法を推進する医師からのコメントが掲載されています。


 つまり、科学的な効果の実証は不可能だという意見です。


 これに対し、「効果が十分に証明されていなくとも副作用がないならいいのではないか?」「お金を払える人が払う分にはいいのではないか?」という意見を目にしました。


 ぼくはこれらの意見に対しては、反対の立場です。


 まず、副作用がないという説明に疑問を感じます。


 一般的に新規治療法や新薬が世間に登場する際は、臨床試験を行います。臨床試験で確認するのは効果だけではありません。副作用も調べます。


 新しい治療法や新薬に関連する副作用かどうかは、判断に難しい場合もあります。ですので、臨床試験ではその試験中に出現したすべての副作用を報告する義務があります。


 また、保険適応となった後も全例調査という形で副作用に関してデータを取り続ける場合があります。臨床試験では、その治療を受けた患者さんが少なかった副作用も数が増えればどうなるかわかりません。



 たとえば、10人に1人に起きる副作用は臨床試験が100人で行われれば気がつきますが、500人に1人しか起きない副作用が臨床試験でみられるかはわかりません。1万人に1人が起こす副作用に関しては、世の中で広く使われるようになってから気がつくこともあります。


 臨床試験と市販後の全例調査で副作用をしっかり集めることで、薬の効果だけでなくリスクも正しく評価できます。


 保険適応となっていない自費診療の治療のほとんどが、こういった副作用の集計を行っていません。そのため「副作用がないから安全です」と宣言する自費診療は「副作用に気がついてない」と捉えていいと思います。


 つまり、「副作用がない」と言い切ってしまう保険適応外の治療は危ないということです。



 副作用関連でもうひとつ追記します。


 たとえば血液クレンジング療法ですが、まったく副作用がないのか本当のところはわかりませんが、確実にリスクがあるのはわかります。


 血液を取り出して、それをまた体の中に戻すわけですから、その過程でばい菌が混入する危険があります。専門的にいうと、菌血症になるリスクを心配します。


 どこまでミスをなくす工夫ができているのか? 施設間で安全性にばらつきはないのか? 担当する医療従事者はきちんと訓練を受けているのか?


 外部の人間からがわかりにくくなっているため、ぼく個人としては、効果より感染症が怖くて受けることができない治療法です。それでも、副作用の報告がない、と断定してしまうあたりに施術者の過信と奢りを感じます。



 さて、副作用の危険性やリスク管理の面から、トンデモ医療の危険性について話してきましたが、もうひとつぼくが「トンデモ医療は選択する人の自由」という意見に賛成できない理由があります。


 それは、トンデモ医療を選択すると治療効果の高い標準治療を受けるチャンスを逃す可能性がある、ということです。


 民間療法(補完代替療法)にはトンデモ医療が多いのですが、実際に民間療法を受けたがん患者さんがどうなったか調査した研究があります(J Natl Cancer Inst. 2018 Jan 1;110(1). )


 281人の非転移性乳癌、前立腺癌、肺癌または結腸直腸癌の患者さんを調べた結果、がんの標準治療を受けずに民間療法だけ行った患者さんは死のリスクが高かったとの結果が出ました。



 標準治療を行えば治る可能性があったがんも民間療法を行うことでチャンスを奪われてしまいます。


 では、「標準治療も民間療法も並行して行えばいいのではないか?」という意見に対してはどうでしょうか。


 標準治療を基本として、民間療法が手助けする形で治療を行えば、金銭的にそれほど高くないのであれば良いのかもしれません。


 ただし、現実は違います。


 多くの患者さんが民間療法へと力を入れていきます。


 民間療法の多くはトンデモ医療の場合が多く、標準治療で治るはずだった病気がトンデモ医療によって悪化してしまう患者さんを多くの医者が経験しています。


 そして、民間療法やトンデモ医療を行う施術者側の問題もあります。


 一般的に、民間療法やトンデモ医療を行う施術者は、反医療のスタンスを取ります。


 西洋医学では治らない病気、とレッテルを貼ることで患者さんを獲得しています。


 保険適応で行える標準治療と、自費で行うトンデモ医療と、これらを並行して行った場合、トンデモ医療の方が魅力的に見えてしまう場面がいくつもあるのです。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:13958文字/本文:16514文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次