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歴史探偵 昭和史をゆく
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歴史
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第七話 握手の向う側──日独伊三国同盟

『歴史探偵 昭和史をゆく』
[著]半藤一利 [発行]PHP研究所


読了目安時間:22分
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1、対英感情を悪化させたもの



 明治から大正にかけて、それと戦後、日本は米英すなわちアングロサクソンと協調することによって大きな発展をみることができた。歴史的事実として、これは無視できない。先人たちは少なくとも成りゆきとしてではなく、米英との協調こそが国家を安全に保ち繁栄を保証するものとして、つまり、確たる国策としてこの道をえらび、守ってきたのである。しかし、昭和になって、この政策を捨てドイツに傾斜していった。米英敵視と親ドイツとは、いわば盾の両面であり、どちらが先ということはできないが、昭和戦前の日本はそのことによって国家を廃亡に導いたということができる。


 日本が対米英関係を協調から対立へと悪化させたのは、一言でいえば、大正十一年のワシントン海軍軍縮会議と昭和五年のロンドン海軍軍縮会議、とくに後者の結果であった。アングロサクソンは共同して世界支配の戦略を練っている。その戦略にひきずり回されてたまるものか、その呪縛から脱却し、日本も独自の世界戦略をもって対抗せねばならない、という自負をともなった焦燥感が、このときに軍部に生まれ、このあとの日本を引っぱりはじめたのである。


 その底流には、日米戦宿命論という考え方があった。ワシントン会議はアメリカの「支那侵入のお膳立て」であり、ロンドン会議は「満蒙侵入のため立案」したもの、「すべて米英にとりて整然たるプログラム」であると、対米英強硬派は主張したのである。この軍部の妄想にときの政財界は同調していった。


 そして、結果論でいえば、日本海軍の手によるワシントン条約廃棄通告(昭和九年十二月)すなわちワシントン体制打破によって“協調”が完全にあえなくなったとき、対米英戦争への歯止めはなくなったということができる。しかもタイミングを合わせたように、急速にナチス・ドイツが軍事大国化し、ヒトラー総統によって欧州新秩序ということが叫ばれ、国際情勢は急激に変転しているときと重なった。そして急速にドイツは日本に接近してきた。


 ここに興味深い秘密文書がある。対中国戦争がどろ沼化した昭和十三年九月に軍令部がまとめたもので、「対英感情は何故に悪化したか」という海軍中央がした分析である。長いから略記するとして、まず“間接的原因”から。


 ㈠世界大戦までは英国は遺憾なく日本を利用した。……しかるに一度講和となるやその態度を俄然一変して、所謂卓子より(こぼ)れ落ちる「パン」屑さえも日本の手に落ちるを拒んだ。(と過去のさまざまな事実をあげ)遂には近年における日本貿易に対する全面的悪性迫害となって顕れたのである。


 ㈡大戦後、英国が日本民族の正当なる生存と発展とに対する圧迫は(いたるところにある、と例をあげ)英国の政治的または経済的支配勢力を有する全世界において然りである。近年における支那の排日侮日政策、蘭領印度その他における傲慢不遜なる対日態度は、いずれも背後に英国の援助あるいは使嗾あるは、日本国の確信する所である……。


 ㈢……自国過去の業績はまったく棚に上げ、日本の為す所行う所ことごとくこれを侵略、もしくは不正行為呼ばわりをなし、「ロイテル」その他の通信網を総動員して、世界輿論の反日化に狂奔し、諸国を誘っていわゆる対日包囲陣を形成し、……まったく、国家利己主義の極端なるものといわざるをえないのである。


 ──つづいて、秘密文書は“直接的原因”を告発する。


 まず、「(イ)支那事変における英国の態度は、我に敵意を有するものと断ぜざるを得ない」として、十六項目におよぶ具体的事実をあげる。それは、たとえば「揚子江下流方面において、英国商船は“ゲリラ”隊にたいし武器を供給しつつある疑いは、すこぶる濃厚である」という疑惑から、「ロンドン金融市場は日本の輸出入手形に対する割引を拒否するなど、経済的にも露骨なる非友誼的態度を示した。然るに支那に対しては二千万ポンドの“クレジット”は与えざりしも、他の方法による援助を考慮する旨、首相が議会において言明している」と、英議会内容にもおよぶ。

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