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世界四大宗教の経済学 宗教とお金、その意外な関係
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経済・金融
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お金のリアリズム

『世界四大宗教の経済学 宗教とお金、その意外な関係』
[著]白取春彦 [発行]PHP研究所


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ユダヤという名称


 宗教の古い順として、本書はまずユダヤ教から始めよう。


 しかし、ユダヤ教とその経済を簡単に紹介する場合でも、ユダヤ教徒につけられた名称をまずは説明しておかなければならない。


 それは、「ヘブライ人」「イスラエル人」「ユダヤ人」、この三つの名称がみなユダヤ教徒を指すものだということだ。


 そしてまた、ユダヤ教という言い方も正しいとはいえない。ユダヤ教としてしまうと、ユダヤ人だけの宗教とかんちがいされる場合もある。ユダヤ教徒自身はたんに真の神を仰ぐ宗教だと思っている。しかし、本書でも慣例通りにこれをユダヤ教としておく。


 さて、「ヘブライ人」「イスラエル人」「ユダヤ人」、この三つの名称は人種のことではなく、歴史の時代に沿って名づけられたものである。


 ヘブライ人とは、「(川の)向こうを行く人」という意味がある。紀元前十数世紀の遊牧民が()(ろう)していく様子を誰かが見て呼んだ名称である。だから、ヘブライ人と記されているとき、多くの場合は古代の遊牧民のことを指す。


 イスラエルとは「神は強し」という意味だが、これはヘブライ人たちが紀元前十一世紀頃に建てた国の名前である。イスラエル人とはしかし、血統の純粋なヘブライ人たちの集合ではない。当時、すでに雑婚が行なわれていた。


 ユダヤ人とは、紀元前六〇年頃にローマ帝国がイスラエルを占領して領地とし、そのユダ地方に住んでいた人々を呼んだときの名称である。それから、彼らユダヤ教徒はユダヤ人と一般に呼ばれるようになったわけだ。


 現代では、ユダヤ人とはユダヤ教を信じる人のこととされる。白人もいるし、黒人もいる。民族の名称でもないし、人種の名称でもない。


お金を取られたら取り返すユダヤ人


 ユダヤ人は金持ちだとか、金銭に執着しているという風説がいまだに根強く残っているが、こういう風説は長い間かかって(じよう)(せい)されてきたデマにすぎない。


 しかしながら、彼らの歴史と神の言葉を記している聖書がお金に対して多く語っているのは事実である。ユダヤ人は聖典である聖書を神からの言葉と信じるから、神が語るようにお金に対して自分の態度を決定しているのである。


 たとえば、聖書の(しん)(げん)には次のような言葉が記されている。

金持ちは貧しい人を支配し、借りた人は、貸す人の奴隷である」


 古代においては、返済できない者は実際に奴隷になるしかなかったのである。


 連帯保証人になってはならないという言葉もある。

…あなたが隣人の保証人になったり、他人のために手を打ったりして、…あなたが隣人の手に自分を渡したなら、すぐ、隣人に頼みに行け。…小鳥が狩人の網から逃れるように、自分をとき放て」


 古代イスラエルでは他人の保証人になるのが一般的慣習だった。しかし、それは危険なことだと、この箴言においてだけでも五回も警告されているのだ。


 ユダヤ人はこういった聖書の言葉の真意をあらゆる角度から研究した『タルムード』という解説書を古代から編んできた。その『タルムード』では、聖書の言葉から生まれた知恵が折々の時代の生き方に即して表現されている。

お金は悪ではなく、呪いでもない。お金は人を祝福するものである」

お金は神からの贈り物を買う機会を与えてくれる」

富は要塞であり、貧困は廃墟である」

タルムード』の知恵をエッセンスの形で紹介しているラビ・M・トケイヤーは著書『ユダヤ5000年の知恵』の中で、ユダヤ人の性格と金銭感覚についてこう書いている。

長い間、ユダヤ人は迫害され、殺されてきた歴史を持っているが、憎しみを語った文学書や文献は、一つも存在していない。


 というのは、ユダヤ人は激しい憎しみを抱けない人間だからである。…


 したがって、シャイロックが憎しみにかられて、『もしあなたが金を返さないなら一ポンドの肉を、とくに心臓を切り取って返せ』と言ったという話(シェクスピア作『ベニスの商人』)は、まったく架空のものであって、現実のユダヤ人には起こり得ないことである。…


 …シェクスピアはキリスト教徒であるから、これはキリスト教徒の考え方をよく示しているのであって、ユダヤ人とはまったく関係がない。


 もしユダヤ人がこうかつで、残忍で、欲が深くて、不正直で、人に対して憎しみにかられていたとすれば、なぜカトリック教会が資金を必要としたときに、同じキリスト教徒のところに行かずに、ユダヤ人のところに来るのだろうか。これはユダヤ人がもっとも同情心に富み、もっとも正直で、もっとも信頼できる人だからである。…


 ユダヤ人はお金をとられても絶対にそれを罰しようとはしない。あくまでもユダヤ人は、相手を罰することよりも、お金を取り返すことに関心がある。だからお金のかわりに自動車をとったり、時計をとったりするけれども、まさか腕や心臓などをとってもそれは使いものにならないことはよくわかっているはずだ。…


 もし誰かがある人からお金を借りた場合、お金を貸したほうは自分の貸したお金が戻ってくることを保証されなければならない。しかしながら、『タルムード』によれば、お金を貸して担保をとった場合、そのものが二つ以上なければ、それを自分のものにすることはできないことになっている。


 たとえば衣服を担保にした場合、彼がそれしか持っていなかったら、それをとることはできない。…その家をとったら、住んでいる人が外で暮らさなければならないような状態だったら、その家をとることはできない。


 たった一つのものでも、それがぜいたくのために持っているものならば別だ」


 こういった金銭倫理は紀元前千年も前から伝わってきていまだにユダヤ人の間では有効なのである。


 加瀬英明も著書で『タルムード』の知恵を紹介している。その著書からお金と商売に関する知恵を少し紹介してみよう。

商人は安く買えるあらゆる商品を仕入れ、できるだけ早く小さなマージンで売れ」

あなたの手にあり、他人が欲している商品を安く売るのは、ビジネスではない。あなたの手になく、しかも他人が欲していないものを売るのがビジネスだ」

食事をするのは笑うため。ブドウ酒は人生を楽しませる。金銭はあらゆる必要に応じる」

金は善人によいことをさせ、悪人に悪いことをさせる」

金は無慈悲な主人であるが、同時にこれほど優れた召使いもいない」


 こういった言説をわたしたちは古いものだとして片付けることなどできない。まさに現代の経済でも有効な知恵だからである。


 ユダヤ人は子供の頃からこのような知恵を学び、暗記するのである。それが大人になって役立たないわけがないのだ。そして、お金に対しての倫理がはっきりしているからビジネスや家計において成功するのである。


 けれども、ユダヤ人はお金にばかり強く眼を向けているわけではない。彼らの芯にあるのはやはり信仰である。信仰があるから、神からの言葉を守ろうとするし、その解釈について神経を注ぎ、それぞれの時代状況に応じて意味を汲みとっているのである。


 だから、ユダヤ人はたんに神を拝んでいる信仰バカではない。信仰と人生と経済がばらばらになっているのではなく、人生と経済に信仰を浸透させた生き方をしているのである。そして、それができる人が真のユダヤ人なのである。

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