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(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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創業320年の鰹節専門店 「だし」再発見のブランド戦略
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ビジネス
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はじめに

『創業320年の鰹節専門店 「だし」再発見のブランド戦略』
[著]高津伊兵衛 [発行]PHP研究所


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 二〇一〇年、「日本橋だし場」が東京日本橋の「コレド室町1」にオープンしました。鰹節専門店として長く商いをしてきた私たちにとって、「だし」の可能性を再発見するきっかけとなりました。「場」と「BAR」を掛けたネーミングの「日本橋だし場」は、引き立ての「だし」をコップに注ぎ、スタンドバー形式で味わっていただくという、これまでにない店の誕生となりました。

「かつお節で引いただけのだしにお金を払う人がいるのか?」という不安の声が上がる中、「だし」のコミュニティとして多くの方に「だしの美味しさを知ってもらいたい」「だしに親しんでもらう場」との思いで始めた「日本橋だし場」は、いざ蓋を開けてみるとオープン当初から連日一〇〇〇人を超えるお客様で大賑わいになり、私たちの予想はいい意味で大きく裏切られました。


 とにかく驚かされたのは、想像以上に多くのお客様がお立ち寄りくださったことでした。引き立ての「だしを飲むのは初めて」といった声も多く、そんな人たちが「おいしい」「いい香り」と言いながら飲んでくださいました。


 洋食に慣れ親しんだ若い人たちにも、「だし」はおいしく魅力的なものであり、機会さえあれば親しんで頂ける。そんな手応えを感じることができたのです。


 そこから可能性が広がっていき、「だし」のうま味を楽しんでいただくレストラン「日本橋だし場 はなれ」や、弁当専門店「日本橋だし場 OBENTO」、惣菜専門店「一汁旬菜 日本橋だし場」とブランドの事業領域を広げていくこととなりました。



 元禄一二年(一六九九)に創業したにんべんは、三二〇年以上続いている鰹節専門店です。長い歴史を刻んできた専門店が、新しいブランドで外食や中食を手がけ、また海外や洋食向けの提案までしていることに違和感を抱くかもしれません。


 しかし私自身は、これまで代々受け継がれてきた、にんべんのアイデンティティとも言える考えの基に、事業を展開しているつもりです。創業者である初代髙津伊兵衛以来、さまざまな挑戦を絶え間なく続けてきた結果が、今日のにんべんにつながっています。


 現在の主力商品である液体調味料「つゆの素」や削り節の鮮度を密封保持した「フレッシュパック」は、昭和三〇年代から四〇年代に生まれたロングセラー商品です。家庭で鰹節を削る習慣が薄れて行く中で、時代に合わせた形でお客様に喜ばれる商品を提供するという点で、新たな需要を生み出すことにつながりました。


 にんべんにはさまざまな古い書物や資料が残っていて、大切にしてきた考え方が伝えられています。「ミツカネにんべん」と呼ばれる印もそのひとつで、人との関係を表しています。それぞれが「お客様」「作る人」「商いをする人」を表していて、この三者の信頼関係ができたときに商売をさせていただける、という感謝の意味が込められています。


 同様に現在のにんべんが自力だけで外食や惣菜事業に取り組んでいても、実現できなかったと思います。多くのパートナーの力添えをいただいて実現することができたと考えています。古くから「人とのつながり」を大切にしてきたからこそ、多くの革新を生み出してきたとも言えます。今後も「人とのつながり」を大切に守り続けて行くことで、さらなる事業展開につながっていくと考えています。



 昨今、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、鰹節やだしは、日本人さらには世界の人々から注目を集めるようになってきました。「和食」は長い歴史の中でさまざまな物事を経て現在に至っています。鰹節もまた長い歴史の中で生まれてきました。鰹節の原型となる物は日本最古の歴史書『古事記』に登場するほど、日本人に長く親しまれているのです。


 以来、日本の食卓には欠かせない食材として、調味料として重宝されています。数百年にわたる歴史を持つ鰹節やだしは、料理を美味しくする基礎・土台となる物です。日本人にとっていわば「味のインフラ」になっています。


 現在は和食を食べる機会が減った若い世代にとっても、日本人として「だし」は記憶のどこかに残っていて、「ほっとして落ち着くもの」「しみじみと美味しく感じる物」として刻み込まれているように思います。


 本書では、江戸時代から伝えられるにんべんの書物から歴史をひも解き、時代の荒波を生き抜くヒントを探りつつ、鰹節専門店として江戸から続く食文化を辿って、だしの価値や魅力を再発見していきます。これまでだしにあまり興味を抱かなかった若い世代や世界の人々にどのように広めていくか、ブランド戦略についても述べていきたいと思います。


 この書籍は、読む方によって歴史書、食文化書、ビジネス書と感じ方が異なるかもしれません。本書に興味を持ち、手に取っていただいた読者の皆様に、にんべんが新たに挑戦していることを感じとっていただければ幸いです。



 令和二年四月

株式会社にんべん一三代当主 代表取締役社長 髙津伊兵衛

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