『京都人の舌つづみ』
[著]吉岡幸雄
[発行]PHP研究所
人生最高の枝豆
六月の中ごろ、久方ぶりに古い友人たちと酒を飲んで歓談する機会があった。居酒屋風の店では、もう枝豆のおつまみが出てきた。鮮やかな緑色を見せ、わずかに固さが残る程度に茹でてあって、塩加減もほどよく、久しぶりに美味しい枝豆に出会った。客の顔を見てから茹でたようで、まだほのかに温かい。こうでなくてはいけない。
その枝豆を口に運びながら、この店も神経が行き届いているけれど、私が学生時代から通っていた「冨治源」という店の場合はもっと美味しかったと、懐かしい味を思い出した。
京都の木屋町通に江戸時代のはじめに角倉了以が開鑿した高瀬川という小さな流れが沿っている。