『楽しくなければ成果は出ない』
[著]田中マイミ
[発行]すばる舎
◆「楽しくなければ成果は出ない」
この本のタイトルを見てどう思ったでしょうか。
中には、「無理やり仕事を楽しめ」と言っているように聞こえる人もいるかもしれません。
わかりますが、違うのです。「心から楽しんでいない人は、成果は出ない時代」なのです。自分が本気で面白いこと、好きなことを活かして遊ぶように仕事をしている人と、好きでも得意でもない仕事を辛いと感じながら続けている人とでは、生み出す価値も、人生の質もまったく違うものになります。
仕事で成果を出そうとするよりも、自分が夢中になって本気で面白いことをやり続けている人が勝つ時代になっているのです。
あなたは今の仕事・人生を本気で楽しめているでしょうか?
◆「好き」「ワクワク」が一番強い武器になる
私は現在、エグゼクティブコーチ、経営コンサルタントとして仕事をしています。数年前までは、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の役員として、延べ1万人を超える社員・スタッフをマネジメントしていました。
ドン・キホーテの店内で流れるあのテーマソングを歌っている人、というとわかりやすいでしょうか。
私がドン・キホーテに入ったのは、32、33歳のころ。ドン・キホーテがまだ府中店の1店舗しかないときでした。住んでいた家のすぐ近くにこの府中店があり、暇そうで休みを取りやすそう、という理由でアルバイトをすることにしたのです。
というのも、そのころ、私の本業はミュージシャンであり、作詞作曲家でもありました。だから、「音楽の仕事に支障がないこと」が、勤め先を選ぶ基準だったのです。
にもかかわらず、ドン・キホーテの仕事を始めるとどんどん忙しくなり、予想を超えてお店の売り上げは上がっていきました。
そして、正社員になってほしい、と何度もお誘いを受けるようになったのです。最初のうちはまったくその気がなかったので、断り続けていました。しかし、何度もお話をいただくうちにだんだん申し訳ない気持ちになり、「人生で一度だけ会社員生活を送るのも悪くないかもしれない」と思い直し、入社を決めました。
そこから22年働き、会社は急成長し、最終的には国内外に数百店舗、売上高1兆円を超える企業になり、私も実質会社のナンバー3になっていました。
◆1万人を見てわかった「成果を出す人・伸びる人」の秘密
これまでに延べ1万人以上の人間をマネジメントし、人財育成も任されてきました。その経験からあることがわかりました。
それは「成果を出す人・伸びる人の共通点」です。
仕事で必要な力は様々なものがあります。
・コミュニケーション力
・頭がいい、論理的に考えられる
・営業、プレゼンなどの伝える力
・業務処理のスピードと正確性
・アイデアや斬新な発想力
でも、それらは本質的ではありません。あくまでスキルにすぎず、本当に必要なものではないからです。成果を出す人というのは、別の言い方をすれば、成長する人と言い換えることができます。
営業やコミュニケーションの力がもともとあっても、成長せずに成果を残せなかったり、自分の周りから人が離れていったりする人もいます。
逆に、もともと何かが飛び抜けて優れていたわけでなくても、あることをきっかけに成長したり、成果を出したりして、昇進していく人もいます。
その違いは何か。
それは、仕事を本気で「楽しい・面白い」と感じながら働けているかです。
仕事が楽しい、職場が楽しい、働くことが面白すぎて休んでと言われても仕事にのめり込んでしまう。ワーカーホリックというわけではなく、仕事も遊びも関係なく、仕事が遊びになっている人が成果を出すし、圧倒的に伸びていきます。
一時期、YouTuberが提言していた「好きなことで、生きていく」という惹句がありましたが、好きなことをしている人が一番強いのです。
特に現代は、自分の好きなことをやることが、熱量を生み出し、ヒトを動かします。
能力が高い、頭がいい、コミュニケーションがうまいなど、スキル的な部分を高めるよりも、自分が楽しめているか、どうすれば楽しめるか、さらにはどうすれば周りの人も楽しく仕事ができるか、相手に「それ、面白いね!」「一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるか。
それらを意識しながら、行動できる人だけが成功し、成長していくのです。
◆仕事内容ではなく、仕事に向かうマインドがすべて
私は「仕事だからつまらなくて当然」などとは考えません。楽しくて、面白いと思うことをしたい。面白いことがなければ、自分で作り出せばいい、と考えています。
すべてはその前提のマインドなのです。
ドン・キホーテのあのテーマソングも、まずは自分が聴いて楽しいものを、というところから作りました。正社員になってから任された人財育成も例外ではなく、楽しみながらやっていました。
人財育成を任されたものの、それまでに人財育成の経験をしたことも勉強したこともありませんでした。会社から育成方針を示されることもなく、それでもやれと言われたことは、やらなくてはいけません。
そこで私は、もし自分が育成される側だったら、こういう指導をされたらやる気になるか、こういう評価のされ方をしたら嬉しいか、ということを考え、実践していきました。いわば、独自の仮説と検証を繰り返したわけです。
その仮説と検証を繰り返しているとき、ふと、18歳ぐらいのときにデール・カーネギーの『人を動かす』(創元社)を読んだことを思い出しました。当時はミュージシャンを目指していたときで、読みながら、「なぜ私はこれを読んでいるんだろう?」と不思議に思った記憶があります。
それを十数年後にまたなぜか思い出して、読み返しながら、仕事・人生における最も大切なこと再確認しました。
「楽しさが人を動かす。楽しくなければ、成果は出ない」
本書では、私自身が成果を出し続けられた秘訣と、1万人以上の部下・スタッフのマネジメントを通して仮説・検証してわかった。仕事と人生で圧倒的成果を出す方法をお伝えします。
田中マイミ