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メンヘラの精神構造
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生き方・教養
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はじめに

『メンヘラの精神構造』
[著]加藤諦三 [発行]PHP研究所


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●メンヘラが行き詰まる二つの原因


 最近、メンヘラという言葉がある。メンヘラとはメンタルヘルスという言葉を略した言葉である。意味は心の()んだ人ということである。


 心理的に問題を抱えた大人になっていくのには、大きくいえば二つの原因がある。



 一つは、人は成長のそれぞれの時期の心理的課題を解決することでしか生きられないのに、その課題の解決から逃避してしまうことである。課題の解決を避けると、依存症だの現実否認だの合理化だのという、偽りの満足を求めることが始まる。


 不可避的な人生の課題を解決することは、自らの心の葛藤に直面することであり、困難と直面することであり、そこから生きている意味も満足も得られる。それなのに、その時期その時期の心理的課題の解決から逃げると、人生が次第に行き詰まっていく。その人の人生が心理的に行き詰まっている状態が、サディズムとか被害者意識等である。


 その表われ方は自己拡張型と自己消滅型とに分かれる。この本では、どちらかというと自己消滅型、つまり「被害者意識」などのほうに焦点を当てた。



 心理的に問題を抱えた大人になっていく二つめの原因は、小さい頃から与えられる破壊的メッセージをどう解決するかということである。


 もちろん幸せにも、破壊的メッセージを与えられることなく、自立に向かって励まされ続けて成長した人もいる。逆に「お前は生きる価値がない」という破壊的メッセージを徹底的に与え続けられて成長した人もいる。


 これでもかこれでもかと(しつ)(よう)に襲った破壊的メッセージと命がけで戦う中で、人は自分の長所、自分の固有の素晴らしさに気がつく。この戦いから逃げて被害者意識に逃げ込むと、最高の自分、素晴らしい自分に気がつくことなく、人生が行き詰まる。


 この破壊的メッセージは、一つめの「それぞれの時期の人生の課題の解決」についても最大の障害となる。要するに、それぞれの時期の人生の課題の解決ができないことが多い。

●人間関係のトラブルを起こす人たち


 また成長の過程で、この心理的に未解決な問題を無意識に蓄積しながら、会社に入り、課長になろうが、部長になろうが、役員になろうが人間関係のトラブルを次々と起こす。


 基本的に、それぞれの時代の心理的課題を解決することなく成長してきてしまったがゆえに、次々に人間関係の問題を起こしてしまうのがメンヘラ社員である。


 自分に破壊的メッセージを与えた人と戦わないで、自己否定的な自己イメージのままで生きているのが、メンヘラ社員である。



 地獄には、現実の地獄と内面の地獄とがある。


 有名な精神科医カレン・ホルナイ(1885~1952)は「自己(べつ)()は内面の地獄」といっている(註1)。


 これが「メンヘラの精神構造」である。外側の環境は決して地獄ではないが、いやむしろ恵まれているが、心が地獄にいる。


 メンヘラの心理について、今までの心理学の説明でいえば、社会的不能症である。社会的不能症とは、ピーターパン症候群の著者で、心理学者のダン・カイリー(1942~96の言葉である。


 つまり「メンヘラの精神構造」とは、今まで使い慣らされてきた言葉でいえば、女性も含めたピーターパン症候群である。


 幼児から青少年期を経て大人になっているのだが、社会的には役に立たない。


 メンヘラ社員は、会社側からすれば、採用を間違ったと思っている。客観的には採用は間違っているのだろうが、メンヘラ社員の側からすれば、みんなに不当にこき使われていると思って被害者意識を持っている。


 なぜ、こういうことが起きるのか? そのことについてこの本では考えた。

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