『それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態』
[著]ロビン・ワーショウ
[訳]山本真麻
[発行]イースト・プレス
「顔見知りによるレイプというものを知りませんでした。
少なくともそれまでの人生には存在しなかったものです」
22歳のときに同僚にレイプされた、ポーラ
あなたが勤務する工場やオフィスや店舗を、あなたが通う教室や教会を、見渡してみてほしい。目に入った女性を適当に4人選ぶ。
そして考えてみてほしい。おそらくその4人のうち少なくとも1人は、知り合いの男性によるレイプまたはレイプ未遂の被害に遭っている。
それが4人のうち誰なのかは、見ただけではわからないだろう。顔見知りによるレイプの被害者は、被害に遭っていない女性と何も違わない。しかしデートレイプや顔見知りによるレイプの事件があると、部外者はたいてい暴行の説明がつく何かしらの落ち度を被害者に探そうとする。特に女性の部外者は、なぜその人がレイプ被害に遭い、自分は遭わなかったのかの理由を解明する必要性にかられる。
ところが説明のつく理由などは存在しない。まったく異なる境遇の女性4人の体験談を読んでほしい。ティーンエイジャー、大学生、働くシングルマザー、31歳以上の女性という、顔見知りによるレイプの被害者に多い4つのカテゴリーからそれぞれ実例を紹介する。
ジル(ティーンエイジャー)
ジルはワシントン州の故郷から近い、霧の立ちこめる山麓の丘の農家に暮らしている。現在は25歳になり、日中は秘書として熱心に働いて、帰宅後は8歳の息子ドニーの宿題を見てやる。息子を愛しているが、その若さで母親となった経緯に関しては記憶に蓋をするよう努めている。ジルが16歳のときに経験したデートレイプで授かった子どもがドニーだ。高校2年生から3年生になる年の夏休みの出来事だった。
ジルは男女交じった友人数名と湖に出かけた。そこで後にレイプ加害者となる男性と出会った。
こっちに来て一緒に座ろうって、私たちから言いました。その後で私は彼に電話番号を教え、彼が電話をかけてきてデートに誘ってくれました。すごく可愛い感じでした。年上ですけど。
その男性の大人っぽさ(20代前半だった)と薄茶色のあごひげと髪、高校生ではなく大工という職業が、魅力的に見えた。ただジルは両親がどう思うかが心配だった。まだあまりデートをしたことがなかった。とはいえ、両親には話していないが、長く付き合っている同い年のボーイフレンドと数か月前に一度だけ性交をしたことがあった。
デートの日になり、その男性がオートバイでジルの家まで迎えに来た。ジルを後ろに乗せてオートバイはより田舎へと走り、川の近くの人目につかない場所に着いた。