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それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態
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ルポ・エッセイ
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5.顔見知りによるレイプの後遺症

『それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態』
[著]ロビン・ワーショウ [訳]山本真麻 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:34分
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「私の世界が足元からすべて蹴り崩されたような感覚でした」

同じ寮に住む男性にレイプされたジョルジェット



 デートレイプと顔見知りによるレイプでは「真の」暴力行為(激しく殴る、凶器で脅したり傷つけたりする)は大して用いられないため、被害者のトラウマは見知らぬ人によるレイプほどは重症化しないと多くの人は信じたがる。だが真実はその逆だ。ワシントンDCのシンクタンク、アーバン・インスティテュートの研究者であるボニー・L・カッツとマーサ・R・バートによると、顔見知りによるレイプの被害者が被害から3年後に自覚している回復具合は、見知らぬ人によるレイプの被害者の場合に比べて低かった。この結果に対し、ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学のデートレイプ研究専門家アンドレア・パロットはこう解説した。顔見知りによるレイプの被害者は当該経験への自認を抑圧する傾向があるため、暴行から受けた影響をより長く引きずりやすいのではないか。一方で見知らぬ人によるレイプの被害者は、カウンセリングなどのサポートに迅速に頼ることが多い。


 いかなるレイプであっても、被害者は、自分の身の安全を掌握できなかったせいで自分が侵害されて踏みにじられ、居心地の良い日常が永久に閉ざされたと感じる。それでも見知らぬ人にレイプされた女性の多くは、保護と支援を得られる場所を周囲の人に与えてもらえるという感覚を、たとえ非常にもろいものだとしても抱くことができる。身近な人からの共感をともなう反応で、自分の被害経験を認めていくのだろう。


 顔見知りにレイプされた女性には、往々にしてそのような場所が欠けている。見知らぬ人によるレイプの被害者と同様に社会への信頼を打ち砕かれるが、見知らぬ人によるレイプの被害者と違って共感してくれるのはほんの一握りの人のみだ。なぜなら、顔見知りによるレイプに関する社会的偏見や被害者を責める傾向、被害者がレイプについて誰にも話さない可能性があるからだ。


 心理学者とレイプ相談センターのカウンセラーは、被害者が事件について話すことが、被害後に現れる反応の理解や回復促進の助けとなると理解している。見知らぬ人によるレイプの被害者も多くの場合は経験を語りたがらないが、それでも専門家や友人、家族に助けを求めることが多い。しかし顔見知りによるレイプの被害者は基本的には事件を誰にも打ち明けず、そのせいで回復への道を閉ざしてしまう。もっとも、あまりに多くの被害者がレイプと認識していないがために、自分の心の中ですら対処ができないのだ。

『Ms.』誌の調査でレイプ・サバイバーと認定された女性同士を比較してわかるのは、顔見知りにレイプされた女性が報告した心理的影響は、見知らぬ人にレイプされた女性のものと同等レベルだった。さらにこの2グループは、どの程度明確に同意していない旨を伝えたか、どの程度の抵抗をしたか、また暴行中に感じた怒りと絶望の感情に関しても、結果の点数に明確な差はなかった。いずれの場合においても自尊心を傷つけられ、恐れと不安に襲われ、将来への希望を砕かれた感覚を反映した甚大な影響をレイプは残す。


〈『Ms.』誌の調査結果〉

・出来事をレイプと認識していたかどうかにかかわらず、調査でレイプ被害者と認定された女性の30%が事件後に自殺を考えた

31%が精神療法に頼った

22%が護身術を習った

82%が事件の経験が永久的に自分を変えたと話した



 アリスの体験談は、見知らぬ人によるレイプと顔見知りによるレイプの後遺症の類似性を示している。30歳のアリスは、少し前に見知らぬ男性にレイプされた。カリフォルニア州の自宅に押し入った男が寝ていたアリスを起こし、ナイフで脅した。12年前、18歳だったアリスは職場の若い同僚にレイプされた。「最初のレイプの後、何か月もの間ひどく憂鬱な状態が続きました」とアリスは話す。「そのときの症状は今回の症状ととてもよく似ています。暴食し、体重が増え、幾晩も泣きました。今回は医者に通い、抗うつ剤を飲んでいますが、あの頃(最初のレイプの後)はしょっちゅう真剣に自殺を考えていました」。


 もしアリスの被害の順序が逆であったなら、結果は違ったかもしれない。はじめに見知らぬ人にレイプされ、その後に顔見知りの男性によるレイプが危ぶまれる状況に陥った女性は、「前に起きたことと似ている」ために、レイプが発生しそうだとすぐに気付くことができると話した。その警戒が功を奏してうまく逃げられることもある。


顔見知りによるレイプの情緒面への影響



 ジョルジェットは当時18歳で、ノースカロライナ大学の1年生だった。メルはジョルジェットの寮のレジデント・アシスタント、つまり寮生の相談役兼監視役として雇われた上級生だった。午前2時頃にジョルジェットは寮のすぐ外に立っていた。パーティーで少し飲んできたが、酔ってはいなかった。ジョルジェットが言うには近寄ってきたメルに「言い寄られた」。何度も断ると、メルはジョルジェットの腕を掴んで自室に引き入れた。ジョルジェットは抵抗したがさして効果はなかった。今もなお、レイプされたときの身体的な痛みと、もみ合いになったときに壁に映っていた影を覚えている。しかしその後にジョルジェットを襲う痛みはさらに酷いものだった。



 誰にも話しませんでした。それどころか自分でも事実を認めたくありませんでしたが、4か月ほど経つと、自分をむしばむ罪悪感と恐怖が隠しきれないほど大きくなり、完全に神経衰弱の状態に陥りました。自殺しようとしましたが、幸いあと一歩のところで怖じ気づきました。


 私の中で何が起きているのか説明のしようがありませんでした。自制心を失っていき、過去に経験したことのないほど何かにおびえ、無力さを感じていました。私の世界が足元からすべて蹴り崩され、一人きりで暗闇に取り残されてさまよっているような感覚でした。レイプのことや、もっと恐ろしいことを夢に見てうなされました。誰かといるのが怖くて、でも一人でいるのも怖かったです。何に対しても集中できなくなり、いくつか単位を落としはじめました。朝起きて何に着替えようかと悩むだけでパニックに陥り、涙を止められませんでした。

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