『それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態』
[著]ロビン・ワーショウ
[訳]山本真麻
[発行]イースト・プレス
「1人が私に挿入したので私は『やめて! 今すぐそれを出して!』と叫びました。
もう1人は私の頭の横に膝をつき、私を押さえてキスをして、
それから私の頭を回して(中略)それから2人は交代し(中略)」
2人の顔見知りの男性によるレイプを思い出すエレイン
エレインがレイプされたのはもう20年前のことだが、座って経験談を語るにはいまだにティッシュ1箱が必要となる。今は、ニューイングランド軍事基地内の木造タウンハウスが連なる一画に、夫と3人の子どもと暮らしている。レイプされた当時は22歳で、両親とともにシカゴに住んでいた。
当時、エレインの人生はほぼ破綻していた。ある男性と恋愛関係になり、妊娠した。彼は結婚を拒否した。エレインは大学を中退して娘を産んだ。不本意ながら赤ん坊を養子縁組に出し、家に戻った。元彼が電話をかけてきて子どもを産んだのかと聞いたとき、エレインは否定した。
家に戻って数週間後、トムという高校時代からの知り合いからの電話で、トムと友人、そして友人の恋人とダブルデートをしないかと誘われた。その時点ではエレインはトムと友人が元彼と仲が良いことを知らなかった。
地元の催し物に行く計画となり、はじめにトムの友人の恋人を、働いているレストランまで迎えに行くことになった。エレインと男性2人がレストランに到着し、トムの友人が中に入ったもののわずか数秒後に出てきて、彼女は体調が悪くて家に帰ったらしいと言った。「ごめんね」と言うトムに対し、エレインは「どうして謝るの? その子の体調が悪いのはあなたのせいじゃないよ」と返した。
そして3人で催し物に向かい、アトラクションを楽しみ、バーに移動して男性2人はビールを数杯、エレインはソーダを1杯飲んだ。男性たちはビール瓶の6本セットを持ち帰り用に購入した後、トムが「この近くにものすごくいい感じの墓地があるんだ。君は墓地が好きだったよね? 行ってみよう」と言い、そこからのエレインの記憶はこうだ。
私はトムの方を見て、「すごい、私墓地が大好きなの。古い墓石が好きで」と答えました。どうしてトムがそれを知っているんだろう、とは考えませんでした。元彼が伝えたから知っていたんです。
私たちは墓地に移動しました。ものすごく広い墓地で、誰もいませんでした。真夜中でしたから。車に乗っているときにトムが私に「ごめんね」と言い、私は「どうして謝るの? 私は墓地が好きなのに」と答えました。男性たちがビール6瓶を出して、3人で1本ずつ飲みながら墓石を眺めてうろうろとして、私はとても楽しんでいました。
するとトムがまた「エレイン、ごめんね」と言い、私は「何の話かよくわからないんだけど」と言いました。
唐突に、私は地面に倒されてシャツをめくりあげられ、ズボンをおろされて、1人が私に挿入したので私は「やめて! 今すぐそれを出して!」と叫びました。もう1人は私の頭の横に膝をつき、私を押さえてキスをして、それから私の頭を回して、私は「やめて! 出して!」と叫びつづけました。それから2人は交代し、今度は違う方がレイプしました。そして2人とも行為を終えるとトムが「ごめんね」とまた言って、やっと私はトムの言葉の意味がわかりました。
後にエレインは、2人が元彼の友人だったことを知り、集団暴行を入念に計画されていたことに気付く。「元彼は、私が出産したかを探りたかったのと、彼ら[レイプ犯]に私の性器の状態を確認させたかったのだと思います。それと彼に出産のことを教えなかったことに対する復讐の気持ちもあったと思います」。暴行後に家に帰るまでの車の中で、男性の1人が、自分の子どもが相手女性とその新しい夫の手で育てられていることにひどく腹が立っているとエレインに話した。「ある意味、彼はその怒りのはけ口にも私を使ったのでしょう」とエレインは言う。
家に帰ると、誰もいませんでした。2階の自分の部屋に行くと真っ暗でした。私は眠りました。翌朝目が覚めると、私はまだ同じ服を着ていました。下着を脱ぐと草が付いていました。その日墓地で芝刈りがあったようだったんです。草を見て、本当に起きたことだとわかりました。
精神的に傷を負いました。(中略)レイプに対して何も感じない状態でした。パンツを下ろして草を見つけなかったら、起きたことを信じなかったと思います。私の日常においては理解の及ばない出来事だったので、夢だったと思ったでしょう。そんなことをできる人間がいるとは思いもしなかったので。
集団レイプがとる形態
顔見知りを対象とする集団レイプは実在する事件であり、単独犯によるレイプとは明らかに異なる。大きな違いは、男性グループへの帰属意識を強化する手段としてレイプを使用する点だ。スーザン・ブラウンミラーは著書『Against Our Will: Men, Women, and Rape(意思に反して:男と女とレイプ)』でこう書いた。「男性が2人または集団でレイプを行うと、男性の身体的な力の絶対的優位性が、疑う余地なく浮き彫りになる。単なる男性による女性の征服ではなく、集団レイプは複数男性による1人の女性の征服だ」。
集団レイプをする男性はおそらく一人きりでレイプをしたことはない。集団レイプに参加することで、仲間との特別な絆を実感する。「男らしさ」を単に寄せ集めただけの力で被害者を征服し、自尊心を得るという、共通の目的のもとに団結するのだ。レイプを通して自分の性的能力をグループのメンバーに知らしめ、自分の高い地位を強調する場ともなる。たいてい、グループのリーダー格が最初に女性を犯し、手下が続く。もともとメンバーの1人と女性が合意の上でセックスをしているところに、他のメンバーを呼んで交代するケースもある。
〈『Ms.』誌の調査結果〉
・レイプを犯した男子学生の16%と、レイプ未遂を犯した男子学生の10%のケースで、加害者は2人以上だった。