読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1298429
0
それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態
2
0
0
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
9.顔見知りによるレイプへの警察・法廷・大学の対応

『それはデートでもトキメキでもセックスでもない 「ないこと」にされてきた「顔見知りによる強姦」の実態』
[著]ロビン・ワーショウ [訳]山本真麻 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:44分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


「真実を語れば社会は真実のために動くと、誰もが知っているのに」

31歳のときにレイプされ、相手を告発したマギー



 2人の女性、2件の顔見知りによるレイプ、2件の告発、2つの評決。


 マギーはアラスカ州で、ホリーはオレゴン州でレイプ被害に遭ったが、2人の事例は顔見知りによるレイプの刑事告発が全国的に難しいことを示す良い例となった。アルバカーキにあるニューメキシコ大学の社会学者で犯罪学研究者のゲイリー・D・ラフリーによると、有罪判決が最も出やすいのは、社会が持つレイプのステレオタイプに合致する事件、つまり凶器を持った他人によるレイプである場合だ。そして女性と加害者が知り合いだった場合、とりわけ2人がデートをしていたり過去に性的な接触があったりした場合には、有罪判決は出にくくなる。ステレオタイプがあるために、警察と検察官は顔見知りによるレイプの罪で加害者を起訴することを渋り、陪審は有罪を出したがらない。法制度のあらゆる段階でこの偏向はあまりに強力で、最近のレイプ相談カウンセラーには被害者に対して刑事訴訟は絶対にしない方がいいと助言する人もいるほどだ。


マギーのレイプ事件:評決─無罪



 マギーがブルースとバーで出会ったのは、アラスカ州に数か月間滞在しているときだった。バーで長時間話し込み、マギーはブルースに興味を抱いたものの、ブルースの押しの強すぎるところを不快に感じていた。そしてブルースはとてもしつこかった。マギーの電話番号を同じテーブルにいた別の女性から聞き出し、何回か電話をかけてきた。当時31歳だったマギーはブルースを警戒した。



 何年もデートなどをしていなかったので、ブルースからの電話に少し嬉しくなってしまったのもあります。ディナーに行こう、あれをしよう、これをしようとブルースは言い、でも私はやっぱりあの不快さを感じていたので、「行かないわ」と断りつづけました。



 結局、2人はデートをした。2回目もあった。3回目のデートでマギーはブルースを家に泊めた。マギーが言うには「その夜は問題なかった」のだが、ブルースに対しては相変わらず複雑な感情を抱いていたそうだ。そして数週間会わない日が続いた。マギーはもうブルースとは二度と寝たくないしデートもしたくないと決めた。


 当時、マギーは留守番を頼まれている家に一人で住んでいた。その町では普通のことだが、マギーもいつも玄関の鍵をかけていなかった。レイプされたその晩も例外ではなかった。タオル一枚を羽織ってバスルームから出て、2階から階下を見ると、ブルースが玄関ホールに立っていた。



 ブルースは「ただ君と話がしたい」と言いました。酔っ払っているのがわかりました。「今までで最高の女性なんだ」とブルースは繰り返し、私は「出て行って」と言いました。


 注目してもらって嬉しかったことと、ブルースの振る舞いが好きではなかったことがあり、はじめは迷っていました。でも最初の[デートを重ねる]段階を終えると(中略)自分の気持ちがはっきりとして、彼にもそれは伝わっていました。



 ブルースが出て行かなかったため、マギーはバスルームに戻って服を着た。もう一度バスルームを出ると、ブルースは2階に上がり、寝室に入っていた。マギーはもう一度出て行くように伝えた。外に送り出すために、マギーは階段を下りはじめた。



 ブルースは私を掴んで寝室に引き入れようとしました。私が階段の一番上に座り込んで引っ張られないようにすると、ブルースは私の背中にのしかかるような体勢になりました。(中略)ブルースの上半身の重さすべてが私の首の後ろにかかり、首がボキボキと鳴って、しばらくの間顔をあげることができなくなりました。ブルースが私を床に押し倒し、しばらく階段の上で争いました。


 喧嘩をすれば私が怪我をするだろう(中略)ブルースは私を押さえつけるかお腹を殴るだろうと思いました。



 その家は裏に大きな崖がある孤立した場所にあった。最も近い隣家は崖の下だった。「この状況から抜け出せるかは自分にかかっていると、ただ思いました」と、マギーは思い出す。


 それは簡単なことではなかった。相手は身長188cm、体重98kgもある屈強な体つきをしていた。争っている間、ブルースの目をえぐりでもしないと、と自分に言い聞かせたが、目玉が自分の上に落ちてくる想像しかできなかった。また、ブルースがマギーの頭を寄木張りの床に繰り返し打ち付けたので、頭蓋骨がぱっくり割れるような気がした。しかしマギーが最も恐れたのは、階下へと投げ落とされることだった。


「大怪我させるつもりね」と私が言うと、ブルースは「殺しはしないよ」と言いました。


 ただ私とベッドに行きたいのだと。どんな手を使ってでも私とセックスをしたい、それがレイプだと言うならレイプでいい、というようなことをブルースは言いました。



 マギーの腕を酷くねじりあげて、ブルースはマギーを寝室に連れて行った。そして服を脱ぐよう指示した。マギーが拒否すると、マギーをベッドに押さえつけ、顔を殴りつけた。服を脱がし、もう一度殴り、そして拳をマギーの顔に突きつけてこう言った。「何かしようとしたら殴って気絶させるからな」。その時点でマギーはショックと怒り、痛みに圧倒されていた。自分の身体から抜け出て、宙に浮かんで暴行を見ている感覚だった。


 ブルースはマギーの膣に挿入し、射精するまでに何度か勃起が萎えた。やっとマギーの上から転がり下りると、自分が去った後に誰にも電話しないようマギーに約束させた。そして、ベッドに横たわりおびえているマギーを残して、階段を下りて行った。



 玄関のドアが開いて、閉まる音が聞こえました。そして何も聞こえなくなりました。私はただ横たわって車が発進するのを待ちました。


 するとたばこを点ける音が聞こえました。ブルースはドアをいったん開け閉めしましたが、家の中に留まって私が動くか待っていたんです。そして一階から大声で叫びました。「誰かに言おうとしているのはわかってるぞ。下りてこい」。



 ブルースはソファーに座ってマギーを隣に座らせ、何があったかを誰にも言うなと、くどくどと話した。飲酒したうえにドラッグも使用していたため、話しながらうとうとしては、はっと目を覚ましていた。ブルースがうとうとするたびにマギーは外へ逃げようとしたが、安全に逃げられるほど寝入ったかどうかがわからなかった。ただ誰にも言わないと約束し、帰ってもらえるよう頼みつづけた。やっとブルースは出て行った。


 ブルースが車で走り去る音が聞こえるまで、マギーはソファーの上でじっとしていた。そして窓の高さよりも低く身をかがめ、玄関まで這って行って鍵をかけた。姉と義兄に電話をかけた。姉たちが警察と地域の女性センターのスタッフを呼んでくれた。


 はじめから、警察はマギーには十分な証拠があると考えていた。病院のレイプ検査でマギーの身体から採取した検体を回収し、ブルース逮捕後にはブルースの身体と衣服から、マギーの血液の検体と家の敷物の繊維を発見した。ブルースは学生時代に暴行歴があり、幾度かは警察沙汰にもなっていた。ブルースは地元で影響力を持つ家庭の出身だったが、警察はやっと逮捕することができて嬉しそうだった。ブルースは第1級の強姦罪と暴行罪、犯行を目的とした不法侵入罪で告発された。


 しかしこの事件の問題がすぐに浮かび上がった。レイプ直後に撮影されたマギーの写真があったのだ。身体にそこまで酷いあざは見られず、マギーは「トラックにはねられたかのようだった」と言っていたものの、写真ではどこにあざがあるのか明確にわからなかった。


 地方検事は年配の男性で、レイプ事件の追及に熱意のあるタイプではなかった。マギーに何度も「これは一般的なレイプ事件ではない」と言った。レイプのすぐ後の聞き込みの際に地方検事は中絶経験の有無を尋ね、マギーはないと答えた。しかし後日、宣誓証言の際にマギーは二度中絶経験があったことを認めた。宗教的に中絶に反対する立場だった地方検事は激怒した。事務所でマギーにこう言った。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:18556文字/本文:21861文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次