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(2021/11/26 追記)

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新 コーチングが人を活かす
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はじめに――刊行20年の大幅改訂にあたって

『新 コーチングが人を活かす』
[著]鈴木義幸 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


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 初めてコーチングに出会ったのは1996年秋でした。


 弊社コーチ・エィ創業者の伊藤が、アメリカ人のコーチを日本に(しょう)(へい)して催したコーチングのトレーニングに私も加わりました。


 これこそ、自分の人生を賭けるに値するもの――そう感じ、とても興奮しました。



 それから、4年が経った2000年。4年間で自分の中に溜めた知識、スキル、経験、情熱を多くの人にシェアしたい。


 そして、人の主体性に働きかける“コーチング”というものがあることを、世の中に伝えたい。


 そんな思いで『コーチングが人を活かす』の執筆にとりかかりました。


 初めての本の執筆でしたが、パソコンのキーボードに置かれた指先は、やむことなく動き続けました。とにかく書きたいことがたくさんありました。


 そして、2000年5月『コーチングが人を活かす』を無事上梓することができました。



 とてもうれしいことに、多くの方が、20年間にわたってこの本を手にとってくださいました。そして、たくさんの感想を寄せてくださいました。


 いくつかをご紹介させてください。


「性格や才能は人それぞれ。指導方法もひとつではないと感じていました。そんな悩みを、ほぐしてくれたのがこの1冊」


「コンパクトで、さらっと読めるけれど、そのときそのときで抱えている課題のヒントが見つかる。定期的に読み返しています」


「人の自発性を引き出す対人関係のスキルとして、友人関係、夫婦関係など幅広い人間関係をよりよくするために効果がある」


「日本の企業で働く人材が、その可能性を最大限発揮するために、できる限り多くの人に読んでもらいたい」


「世の中が多様化する現在、新たな付加価値を次々と生み出さなければ組織は存続できない。人それぞれの個性を認め、それを伸ばす、そんな対話のあり方をコーチングは教えてくれる」


21世紀にコーチングが必要とされる3つの理由



 2000年当時、これから企業でコーチングが必要とされるであろうと思っていました。その理由は3つありました。



 1つ目は“何が正解かが簡単には見つけられなくなってきている”こと。


 経験豊富な上司や先輩が、部下や後輩に「こうするんだ」と指示をするだけでは、もはやさまざまな事態に対処できない。


 前例のない課題に対して解を見出すためには、部下や後輩に問いかけ、彼らと一緒にそれを探り出していくようなアプローチが必要であり、コーチングはそれに応えるものである。



 2つ目は、“組織における多様性の拡大”です。


 どの世代も同じ価値観を抱く時代ではなく、それは世代によって大きく変わろうとしている。


 外国人の部下も増えている。女性活用も声高に叫ばれている(繰り返しますが、これは昨今の話ではありません。2000年当時の話です)。


 そのような労働環境の変化の中で、コーチングは、価値観を異にする人と方向性を合わせ、共に未来を描いていくことに寄与しうる。



 3つ目は、“イノベーションを求める声の高まり”です。


 当時は“失われた10年”とよく言われました。


 日本企業が反転攻勢に出るためには、イノベーションが必要である。


 イノベーションを起こすには失敗を恐れず挑戦する気構えが求められる。


 それには、上司が部下の挑戦をうながさなければいけない。


 挑戦をうながすためには「挑戦しろ!」と鼓舞するだけでは不十分で、部下に問いかけ、彼ら彼女らの視座を上げ、視野を広げ、視点を変えるコーチングが機能する。



 本書を読んでくださった方のコメントや感想は、コーチングがこの3つのことに貢献しうるということを示してくれるものでした。


・簡単に正解を見つけることのできない課題の増加

・多様性の拡大

・イノベーションの必要性



 この3つは、20年経った現在の日本でも、変わらず企業の中にテーマとして横たわっています。そして、その強度は明らかに20年前より増しています。


コーチングの貢献領域は大きく広がった



 この20年間でコーチングが求められる領域も、当時の想像以上に大きく広がりました。


 たとえば“スポーツの世界”


 競争はより一層熾烈になり、トレーニングの仕方を含め、コーチや監督といえども、簡単に解を見出し選手にアドバイスすることは難しい。


 選手との世代格差が存在し、チームスポーツであれば多様な国の人をマネジメントしなければいけない。


 新しい発想と戦略がなければ、もはや勝利を手にすることはできない。


 ここでも3つのテーマは同じようにあり、多くのスポーツコーチによってコーチングの考え方やスキルがとり入れられてきています。



 また“医療の世界”


 医療の世界では、昨今“チーム医療”の必要性が叫ばれています。


 医師、看護師、薬剤師らがチームとなって、どんな治療が患者さんにとって最適かを見出していく。「この処置で大丈夫」と単純に医師が決められることばかりではない。


 職種によって各人各様の立場、考え方がある。


 時に大胆な病院運営に関する発想の転換も求められる。


 やはり3つのテーマは存在しています。


 医療業界では、日本医療マネジメント学会が開催されるたびに、病院へのコーチング導入の事例報告がなされるほどです。



 そして“学校や家庭”


 先生だからといって、親だからといって、学校生活について子どもにアドバイスすることは簡単ではありません。


 それこそデジタルネイティブの子ども世代との間には大きな価値観のギャップがある。


 もちろん、子どもが大きく未来に向けて羽ばたけるように、視野を広げ、視座を上げてやりたい。


 ここにも3つのチャレンジが横たわっています。


 コーチングを学校や家庭で試し「子どもとの関係性が大きく変わった」とおっしゃってくださる先生、親御さんは本当に多い。



 企業、スポーツ、医療、学校、そして家庭――さまざまなエリアでコーチングが活用されていることは、米国から初めて日本にコーチングを持ち込んだ会社の代表として、本当にうれしいことです。


改訂版執筆を決めた3つの理由



 さて、本書の旧版を上梓して20年が経ちます。


 今回、ディスカヴァー・トゥエンティワンからのお声がけもあって、旧版に大きく改訂を施すことにしました。


 声をかけていただいたのがきっかけではありますが「今すぐ筆をとらねば!」と思った理由は大きく3つあります。



 まず1つ目は“一部でコーチングが誤解して使われていることに対する懸念”です。


 コーチングでは、相手に質問をしていくわけですが“学校の問題を解かせるように”質問してしまう方が一定数いると感じています。

「君、これはどう思う?」


 角度としては多少“上”から。すでに問いかけている自分の中に答えがあり、それを相手に考えさせようとする。


 これは、コーチングではありません。


 コーチングはあくまでも、問いを2人の間に置き、一緒に探索しながら、相手の発見をうながしていくというアプローチをとります。


 本書を2000年に執筆したときは、この“相手の発見をうながす”というところにとても強いフォーカスを当てました。


 そのために、本文中では“引き出す”という言葉を多用しました。当時は“引き出す”という言葉で、こちらから言うのではなく“相手の中にある可能性を顕在化させるのだ”ということを強調したかったのです。



 ですが、聞きようによっては“引き出す”という言葉は、別の意味を持ちかねません。


 こちらは経験がある人、わかっている人、スキルを持っている人。さあ、あなたはまな板の上に乗ってください。私が引き出して見せますから……。そうもとられかねません。


 このことはずっと気になっていました。


 今回、思い切って“引き出す”という表現を削除し、別の表現に変えています。


 単に言葉を変えただけでなく、“コーチングとは、問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見をうながすもの”だということを、本書を貫く哲学としてど真ん中に置いています。



 2つ目の理由は“コーチングというスキルをベースに、いかにチームや組織の中での対話を起こすのかを書きたかった”ということがあります。


 コーチングは、基本的に1対1で行うものです。


 ですが「会議やミーティング、そもそもチーム、組織を活性化させるために、どうコーチングを活かせますか?」という質問を、日常的に受けます。

“チームや組織での対話を活性化させたい”というニーズに応えるもの、それを本書の中に盛り込んでみたいと思いました。



 3つ目の理由は“この20年間で、弊社コーチ・エィの仲間と共に、お客様との体験を通して(つちか)った、新たなコーチングのスキルや知識をお伝えしたい”ということです。


 コーチングは、最初から完全に完成したものではなく、日々世界中のさまざまなところで研鑽され、新しいものへと進化を続けています。


 この間、新しく手にしたもの、見つけたものを、みなさんと共有したいと思いました。



 このように、本書では、いくつかの新しい切り口でコーチングについて語っていますが、コーチングの本質が変わるわけではありません。


 コーチングの本質は“未来を創り出す主体的な人材を創る”ことにあります。


 今、目の前にいる人の主体性に働きかけ、その人が、未来に向けて飛躍するように、いかに自分のコミュニケーションを使うことができるのか――それがコーチングが目指すところであることは、おそらく普遍的であると思います。



 本書を手にされたあなたが、今まで以上に、仕事で、プライベートで、そして家庭で、周りの人にコーチングをベースとしたコミュニケーションをもって働きかけ、未来を創り出す主体的な人の創造に関わっていただけたら、著者としてこれほどうれしいことはありません。


 本書を手にとってくださり、本当にありがとうございます。


鈴木義幸

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