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大分断 教育がもたらす新たな階級化社会
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教育
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第2章 「能力主義」という矛盾

『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』
[著]エマニュエル・トッド [訳]大野舞 [発行]PHP研究所


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識字率の上昇がもたらした歴史のうねり



 教育の運命というのは歴史そのものです。まず文字はシュメール(初期のメソポタミア文明)で紀元前に神殿の会計を担当していた人々によって発明されました。ほぼ同時かその少し後にエジプトでも文字文化が生まれ、それは主に表意文字と呼ばれるものでした。ただ、文字を書くという行為は、(ひつ)(せい)の階級に限定されたものでした。つまり文字が生まれた時代には、いつの日か全ての人が読み書きできるようになるなどとは誰も想像していなかったということです。なぜならば、最初の文字のシステムは非常に複雑だったという点が挙げられます。もちろんその後、フェニキア人によってアブジャド()(いん)文字)が生まれ、ギリシャ人によってアルファベットも生まれましたが、それでもまだ、まさか全ての人が読み書きできるようになることなど、誰も考えていませんでした。


 古代ギリシャや古代ローマでは、限定的な地域において、ある程度の人々が読み書きできる時代もあったようです。ヘレニズム時代や古代ローマの文明はもちろん文字に支えられていましたが、そこに生きた人々の大半は読み書きなどできませんでした。西ローマ帝国では、民族移動時代を経てカール大帝の時代に入ってもなお、文字は一部の聖職者に限定されたものでした。ただ、カール大帝はフランスで学校を設立した人物としても知られています。中世時代には商人たちが少し読み書きができるようになっていたようですし、貴族階級の一部の人々も学んだりしたようです。


 その後プロテスタントの宗教改革が起き、ようやく、全ての人々が読み書きできるようになるべきだという考え方が生まれたのです。私にとって近代社会の始まりはこのあたりです。北部、そして中央ヨーロッパ、つまりドイツや北欧の国々、オランダ、イギリスなど、プロテスタントの国々でようやく全ての人が読み書きを学ぶことが可能だと気づいたのです。中世の初期に一体誰がこんなことを想像できたでしょうか。


 そして、ヨーロッパ全体、全世界で現代に至るまで識字率は上昇していきました。これから一〇年も経てば地球上全ての人々が読み書きができるようになるでしょう。これに伴い、当然のことながら女性の識字率も上がり、地球上のあちこちで出生率が下がるという現象も起きました。


 このように、私にとって教育の発展というのは歴史そのものなのです。もちろん私が今お話ししたのは読み書きに限定した話です。これはどちらかというとシンプルな話です。


 次に、中等教育の発展があります。全ての人が読み書きできるようになる世界を想像したプロテスタントの国々ですら、まさかある日、全ての人が中等教育を受けられるようになるなんてことは想像できませんでした。

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