読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1300261
0
なんとなく、日本人 世界に通用する強さの秘密
2
0
0
0
0
0
0
人文・科学
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第三章 不思議な日本語

『なんとなく、日本人 世界に通用する強さの秘密』
[著]小笠原泰 [発行]PHP研究所


読了目安時間:23分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

音節数が百しかない


 第二章で、日本語は述語に比重を置く、優れて文脈依存の高い言語であると申し上げたが、客観的に見て、日本語は、かなり不思議な言葉である。そもそも、表意文字(漢字)と表音文字(仮名)、それもひらがなとカタカナの二種類を併用している、表記上きわめて例外的な言語である。表意文字と表音文字の併用をしているのは、現在では世界でも日本だけであろう。歴史を振り返っても、一九七〇年以前の韓国と戦前の朝鮮くらいではないだろうか。


 日本語は、話し言葉は別として、読み書きの習得が非常に難しい言語だと思う。日本語は、文法構造的にはウラル・アルタイ語のアルタイ語族に属しているともいわれてきたが、韓国語よりもアルタイ語族との親近性は薄いといわれ、この説に対する異論が強くなってきている。スペイン地方のバスク語とともに、出自と語族への帰属の不明な、世界の孤児言語であるという説のほうが有力になってきているらしい。つまるところ、言語学的分類からいって確かな出自・系統がわからない言語と考えたほうがよい。


 言語を共有することが共同組織体の根幹であるとすれば、言語は個人のものであるとともに、自分と他者との間に共通なものでもある。しかし、誰一人として言語を自ら作ることはない。言語は社会的産物として個人に与えられるものである。共同組織体の個々の成員は、共有物としての言語を個人のものとして使用し、そのような言語の個人的な使用によって、個々の成員は共同組織体に再び帰着するのである。言語と個人のこのような関係を理解すれば、言語が共同組織体における個人および組織体の志向性を大きく規定する重大な要因のひとつであることに、異論を唱える者は少ないであろう。


 日本語という風変わりな言語をしゃべる集団が一国、一言語、一文字、一文化、一文明を形成し、人口も多くて経済力もあるとなれば、世界から「よくわからん集団だ」といわれるのもわからないではない。欧米人のみならず、中国人から見ても、没我の集団主義者集団に見えるわけであるから、問題にならないわけがない。


 日本語が不思議な言語になった理由は、二つあると考えられる。ひとつは、文字をもたなかった日本語(やまとことば)が、その言語発展の初期段階において、漢語(シナ語)と漢字を導入してしまったことである。その結果、やまとことばとしての成長が止まってしまい、抽象的な概念など難しいことは、外来語である漢語でなければ何もいえなくなってしまった。


 そもそも漢語と日本語は言語系統的に関係がないのであるから、隣の国で言語系統的に近いから、日本人は漢語・漢字を導入したと考えるなら大きな間違いである。当時の日本人にとっては、アルファベットが入ってこようが、漢字が入ってこようが五十歩百歩であったはずである。漢語・漢字を導入したお陰で、名詞を通した概念の高度化はなされず、日本語は、観念をあらわす言葉が貧弱で抽象度が低く、概念に弱い言葉となってしまった。また、江戸以前の和製漢語は聞いただけでわかるが、明治以降に増殖した漢語ベースの熟語は、興行、工業、鉱業、鋼業と、漢字を見ないと音を聞いても意味がわからないものが多数ある。これは他の言語ではあまりお目にかかれない奇妙な現象である。つまり、日本語に限っては、文字はしゃべる言葉の影ではないのである。


 さらには、文化という概念がなく、カルチャーの訳語としての文化という熟語を受容した日本人の多くは、文化という熟語を、「カルチャー」として認識しているというねじれ現象まで起きている。最近では概念を正確に理解していない、つまり日本語にしてもおかしいので、横文字をそのまま使ってしまうケースが増えてきている。さすがに行きすぎと思ったのか、政府も横文字を日本語化するように指導をしているようだが、むしろ、いっそうよくわからなくなっているのではないだろうか。


 たとえば、「accountability」の「説明責任」はよく使われるか、この日本語訳はいただけない。これは、説明と責任をつなげただけで、概念として何を明確に意味するのか、よくわからない。昔からある「釈明」のほうがよほどよくわかる。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:9570文字/本文:11290文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次