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なんとなく、日本人 世界に通用する強さの秘密
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人文・科学
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第七章 若者たちは日本を変えるか

『なんとなく、日本人 世界に通用する強さの秘密』
[著]小笠原泰 [発行]PHP研究所


読了目安時間:17分
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機動戦士ガンダム』と『新世紀エヴァンゲリオン』は、ともに日本のアニメ史を飾る画期的な作品である。しかし、学生時代に『機動戦士ガンダム』を見てきた私たちの世代から見ると、『エヴァンゲリオン』には、ある種の違和感がある。なぜかというと、『エヴァンゲリオン』には、ストーリー性が感じられないからである。


 評論家の東浩紀は『動物化するポストモダン』(講談社現代新書、二〇〇一年)のなかで、若年世代においては、ガンダムのもつ「ものがたり」は失われ、「エヴァンゲリオン」のもつ「ことがたり」重視へと変化しつつあり、情報技術の発展を背景に、オリジナルの喪失と組み合わせの隆盛(データベース化)が進んでいると述べている。


 はたして「ものがたり」の喪失は、現在の若者たちが、日本的な高度文脈依存社会を否定していることを意味しているのであろうか。「ことがたり」は、日本社会のもつ強い文脈依存を変えうるのであろうか。


 たしかに、若年層の行動の変化のなかには、一見、従来の日本的精神構造にかかわる根本的な変化と映るものもあるので、若年層における役割と自己との同一化について、少し検討を加えてみることにしたい。


日本的原理の崩壊?


 現在の若者は、他者の視線に対して鈍感になってきている。アメリカ化の影響ともいえる「私は私、あなたはあなたで関係ありません」という絶対的相対主義(自己中心的ミーイズム)が蔓延し、学校や家庭を含む社会教育システム機能は弱体化した。これは、他者の目を気にすることを通して育てられる相互協調的自己構造の再生産プロセスがうまく機能していないことを示しており、日本社会の伝統である相互配慮の心性の弱体化を示しているのではないかという指摘がある(『日本人という鬱病』芝伸太郎、人文書院、一九九九年)


 他者配慮の心性の衰退は、「集団主義の対極原理である個人主義への移行が若年層では進行している証拠であって、ひいては日本的原理全般の崩壊をもたらす」というひとつの仮説が導き出される。私も含めて四十代以上の目には、おそらくこのように映るのではないか。しかし、これらの変化は、本当に日本的原理の崩壊と個人主義への移行をもたらすのであろうか。


 最近の若者の間では、対人恐怖症が減少しているという。臨床的事実では減っているのかもしれないが、その一方で、自宅にこもり対人関係を遮断する者(俗にいう「ひきこもり」)が急増しており、対人関係の維持がより拙劣になってはいないか。筆者は、積極的な社会との関係を否定するニートもこの範疇に属すると思っている。


 事実、人間関係で傷つきたくないという理由で、携帯電話やインターネットを通した仮想的=非実体的な人間関係の構築に若者が陥っているという指摘がある。これは明らかに、対人関係の稚拙化であろう。稚拙化の背景には、各生徒にはそれぞれに優秀な能力があるとして、昭和六十年代から極端な競争排除を行なってきた小学校をはじめとする教育の誤り(子供に必要なのは、競争排除の悪平等ではなく、なんでもよいから一番になるという成功体験であろう)が大きいのではないか。

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