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(2021/11/26 追記)

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ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!
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エンタメ
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第二章 終わらない「80’sリバイバル」と「ノスタルジー消費」

『ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!』
[著]高橋ヨシキ [著] てらさわホーク [発行]イースト・プレス


読了目安時間:53分
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 ここ数年、Netflixで人気となった『ストレンジャー・シングス 未知の世界』、劇場版リメイク作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』をはじめ、sポップ・カルチャーを引用する作品が多い。確かにあらゆる時代と比べても、ポップ・カルチャーにおいて1980年代は特別な時期だったかもしれない。スピルバーグ/ルーカスの最盛期であり、ホラー映画でも『シャイニング』から『エルム街の悪夢』まで幅広い傑作が作られ、何といってもビデオゲームが普及したことは、文化を決定的に変えた。MTVの誕生も81年だ。


 しかし、いくらなんでもリバイバル/リメイク作品が、あまりにも量産されてはいないだろうか。『スター・ウォーズ』のオリジナル・トリロジーが70年代後半から80年代にかけて、『ターミネーター』の1作目が84年公開だが、いまだに続編が制作され、期待され続けている。多感な少年期に80年代を過ごした世代は現在の4050代であり、この時代の文化を「必須教養」として扱うことは、現代の若い観客から目を背けているようにすら思える。


 果たして、映画はノスタルジーに浸る年配向けのコンテンツになっていくのか。ハリウッドにオリジナル作品を作る意欲が失われつつあるのか。それとも、ただのサイクルとしてのブームにすぎず、こうした懸念は()(ゆう)であるのか。

「若者の洋画離れ」も叫ばれる今、リバイバル/リメイクの問題について語る。


量産される80年代作品の「リバイバル」「続編」


ホーク『ストレンジャー・シングス 未知の世界』★1が大ヒットだそうで。監督、原案もやっているコンビが双子の兄弟(ザ・ファー・ブラザーズ)で、1984年生まれです。

ヨシキ あれっ、そうなのか、じゃあ舞台になってる1980年代について、リアルタイムでは全然知らないってことか。

ホーク そういうことになりますね。

ヨシキ もちろん、知らないから描くことができないってわけじゃない。そんなこと言い出したら、『2001年宇宙の旅』も『バリー・リンドン』も作れなくなっちゃう。でも、『ストレンジャー・シングス』はそうか、作り手自身のノスタルジーでもないってことなのか。もしくは、「ノスタルジー」というノスタルジーなのかもしれない。それもまあよくある。


 ところで、「何々年代」っていうのには、「のりしろ」があると思うんだ。前後3年ぶんくらいかなあ。そのくらいは、どっちの「年代」に入れても大丈夫な感じっていうか。1980年代の、特に映画を中心としたポップ・カルチャーの原点には、やっぱり『JAWS/ジョーズ』がそびえ立っている。『ジョーズ』が登場したとき、「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンは、「こんな映画をメジャーのスタジオに作られたら、我々インディペンデントのB級映画は商売上がったりだ」とぼやいたそうだけど。

ホーク 確かに。

ヨシキ『ジョーズ』と『スター・ウォーズ』は、全部がとは言わないけど、それまでどうしても一段下に見られがちだったジャンル、すなわちモンスター映画とスペース・オペラで世界を征服してしまった。50年代から30年かけてじわじわと広がってきたポップ・カルチャーの世界が、さらにメタな次元に突入したような感じはある。そこからさらに30年経って、ポップ・カルチャーはメタにメタを重ねた、非常に自己言及性の高いものへと変質しつつある。

ホーク 今のアメリカ映画のラインナップが、80年代と変わらないと言われたりするじゃないですか。当時の作品の続編とか、リメイクばっかりだと。確かに大丈夫かなと思うところはありますけど、ただそれ以上に、80年代リバイバルの正体がわからない気がして。あのころの諸々のいったい何が、今受けているのかということが、実は非常にボンヤリしていませんかと。


 おそらく「80年代に大ヒットした、あの~アレです」と言っておけば、企画が通ってお金が出るんでしょうね。だから、いつまでも『ターミネーター』だって続編が作られるわけでしょう。毎度毎度、5年に1回はやっていますよね。それが毎回「新シリーズ、よーい、ドン!」と同時に終了という。ビックリしましたよ、この間の最新作なんか、ありえないコケ方をしていたじゃないですか。2億ドルかけて、公開初週の全米興収が3000万ドルでしたって。思わず「フヘッ!」って声が出ましたから。それでも80年代発のプロパティが、たびたび帰ってくる。ずいぶん以前ですけど、『特攻野郎Aチーム』が満を持して映画化ということもありました。

ヨシキ 戦車がパラシュートで落下しながら、大砲撃つヤツだ! 最高だったな、あの場面は。

ホーク 僕らは喜びますけど(笑)。それはいい80年代リバイバルか。まあしかし、その手の懐かしいリメイク路線って、総じてそんなに当たりもしていない印象がある。にもかかわらず、80年代のあれこれが引きも切らないですよね。

ヨシキ あっそうか。今思ったけど、「ノスタルジーというノスタルジー」でもないのか。『ストレンジャー・シングス』の作り手とかは、実際に、子ども時代に浴びるようにテレビで80年代のものに触れているわけだから。むしろテレビと密接な関係があるんだな。

ホーク そこはタランティーノとは違うところでね。

ヨシキ タランティーノはビデオで『激突! 殺人拳』とかを観ていた(笑)。まあ年齢もずっと上だけどね。

ホーク 若いころに観ていたものが違う。マーティン・スコセッシも、あの人はあの人で過去に対する憧れがありますよね。コッポラもそうか。

ヨシキ それぞれ、特定の時代への思い入れが強い、ってことは誰しもあると思う。ノスタルジーを描いた映画も、対象となる年代はまちまちで。1970年代には1930年代、40年代をノスタルジックに描いた作品がやたらと作られたりした。その状況を指して、「ノスタルジア・クレイズ」と言われたくらいで。

ホーク それぞれの時代に対する憧れ。それこそ、コッポラがどえらいセットをブッ建てて撮った映画が大コケしたことがありましたよね。『ワン・フロム・ザ・ハート』。あれは50年代が舞台でしたけど。

ヨシキ 1910年代、20年代、30年代前半くらいまでは、当然ノスタルジーの対象になるとして、30年代後半になると、ナチスが出てきてきな臭くなってくるし、40年代だと、戦争映画になっちゃう。

ホーク コッポラには、20年代が舞台の『コットンクラブ』もありました。作り手側にはいつも過去への憧れがあるんでしょうけど、どうも最近は80年代でスタックしてませんかね。


 ──最近で言えば、『ジョーカー』も80年代ノスタルジアですかね。

ヨシキ あれはよくわからない。70年代と80年代が混ざってる感じ? だいぶ『ジョーカー』とは毛色が違うけど、ティム・バートンの『バットマン』と『バットマン:リターンズ』も、70年代と80年代が混ざり合っていた。映画に出てくる車とか電話とかで判別できるんだけど。先にやってたんだな~。

ホーク やってるやってる。しかし、『ジョーカー』に関してはね、いろいろと問題が。画面から推測するに、映画の舞台は80年代初頭あたりだと思うんですがね。監督はそれもごまかしていました。「何年かわからないよ」って。

ヨシキ 全部曖昧にしてある。映画自体の核となる原理が「曖昧さ」なんだよね。大ヒットしたし、その「戦略」の巧みさはよくわかるけど……。

ホーク 映画が始まると、まず赤字に黒のワーナーロゴが出てくる。これは僕が好きな感じのヤツかなと思わせておいて、実は当時の空気感がそこまで濃く再現されているわけでもないという。

ヨシキ『ジョーカー』はそういうところも含め、観客それぞれの、時代や状況やキャラクターに対する思い入れを全部受け止めることのできる、間口の広い容器としてうまくいった感じもするな。だから、いろんな人が、てんでばらばらな視点から絶賛することが可能になっている。


スピルバーグが掘り当てた鉱脈「郊外映画」とその影響


ヨシキ 話を戻すけど、『ストレンジャー・シングス』にせよ、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』★2にせよ、なんだかんだで『グーニーズ』★3的なもの、もっと言えば『グーニーズ』が体現していると思われている、「当時の〈スピルバーグ映画〉」感覚を再現しようとしている。『グーニーズ』も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も、スピルバーグ監督作品じゃないけど、『E.T.』でスピルバーグが掘り当てた、「郊外映画」という金脈をめぐって発生した一種のゴールドラッシュの産物。その潮流が、ボンヤリと形作るものとしての〈スピルバーグ映画〉。

「郊外映画」では、『スター・ファイター』が良かったな。郊外といっても、『スター・ファイター』のそれは低所得者層が暮らすトレイラーパークなんだよ。そこで、とあるゲームでハイスコアを叩き出すことに命をかけている少年のところに、宇宙からスカウトが来る。実はそのゲームは、「スター・ファイター」のパイロットを養成するためのマシンだったんだ。そりゃ宇宙に行くよね。最高すぎる。


 ──たぶん、ビデオゲームが出てきたときに、そういう発想が出たんですね。

ヨシキ うん。当時のゲームのグラフィックはご存知の通り、とてもシンプルな、ドット絵とも呼べないようなものだったけど、そこで「何が起きているのか」というリアリティを、プレイヤーはみんな強く持っていた。


 ──ビデオゲームがブームになったのも、80年代にアイコニックな出来事じゃないですか。出てきたのは70年代でも、一般化したのは80年代ですよね。

ヨシキ インベーダーとかパックマンは70年代だけど、()(とう)のゲーセン文化が花開いたのはやっぱり80年代。

ホーク スペースインベーダーの発売は、78年ですかね。

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