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(2021/11/26 追記)

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ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!
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エンタメ
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第四章 世界がディズニファイされていく

『ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!』
[著]高橋ヨシキ [著] てらさわホーク [発行]イースト・プレス


読了目安時間:49分
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 マーベル・エンターテインメント、ルーカスフィルム、21世紀フォックス……名だたる映画会社を傘下に収めた、ディズニー帝国の快進撃が止まらない。2019年世界興行収入ベスト10のうち、実に7つをディズニーによる配給作品が占め、ここ10年で世界興収1位を獲得したディズニー以外の作品は、『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ハリーポッターと死の秘宝』『アバター』のわずか3つしかない。さらに映画のみならず、ディズニーランドなどのレジャー施設、膨大なグッズ展開、IPを起点にした版権ビジネスなど、その覇権はあらゆる領域に侵食しつつある。


 しかし、これだけの超エンタメ産業体と化したディズニーは、むしろ最もエンターテインメントからかけ離れた企業に変質していきつつある。実写版『ダンボ』、実写版『アラジン』、実写版『ライオン・キング』など、製作するのは自社作品のリメイクやスピンオフ、あるいは誰からも求められていないような続編ばかりだ。


 数年先まで何十本もラインナップを並べて製作し、劇場を押さえ込む超ブロックバスター体制によって、映画本来の多様性に暗雲が立ち込めていないか。Netflixの向こうを張った「Disney+」は成功を収めるのか。ディズニー帝国の覇権が強まる流れは、映画にとってのディストピアをもたらすのか。ディズニーから、映画界の明日を占う。


ディズニーの席巻はいつからか?



 ──2019年の興収を見ると、上位に入っているのはディズニー映画ばかりです。

ヨシキ ディズニーは巨大産業なので、一口に「ディズニー」と括ってしまうことの危険性は常に意識しておきたいんだけど、とはいえ最近のディズニー映画の趨勢を見てると、本当にどうなってんだ? と思わざるをえない。『スター・ウォーズ』シークエルがいい例で。

ホーク どこまでディズニーの影響なんですかね。

ヨシキ でも、ディズニーは自社「製品」としての『スター・ウォーズ』に、会社として決裁を下してるわけでしょ。

ホーク まあねえ。『スター・ウォーズ』が思わぬことになったからといって、キャスリーン・ケネディをクビにしようとは決してならないわけですからね。

ヨシキ キャスリーン・ケネディの政治的立ち回りにおけるカンの良さ、というのもあるかな。むしろ政治的に立ち回ることだけはうまいっていうか。しかし、ディズニーがここまでイケイケドンドンになったのは比較的最近だよね。実写作品だと、2000年代初頭はまだエディ・マーフィの『ホーンテッド・マンション』(03年)とかをやっていた。『フラバー』は1997年か。それでも同時期に、優れたアニメーション映画もしっかり作られている。

ホーク そうね。それが2010年代になると、ティム・バートンが『アリス・イン・ワンダーランド』★1などなど、適当な仕事をし始める。これは『ダンボ』につながる話ですけど、バートンはいつからああなってしまったんでしょう。あの人はいつまでが良かったのかしら。

ヨシキ それも一概には言えないなあ。誰でもそうだけど、そこまでコンスタントに傑作ばかりものにできるわけではない、ということも考えないと。「誰々はいつからダメになった」という物言いは文学でも音楽でも絵画でも映画でもあるけど、そういう物言いに妥当性がどこまであるかといえば、基本、あんまりないんじゃないかと思っている。


 誰しも創作を続けていく中で波があると思うし、「期待したものと違った」というだけでこっぴどく叩かれる場合も多い。ティム・バートンなんかいい例で、観客それぞれが思ってる「ティム・バートン映画」像があって、それから外れると「ダメになった」って言われるんだけど、それはいくらなんでも雑すぎる。


 ──ただ、『アリス・イン・ワンダーランド』が、ここ10年のディズニーのあり方を決定づけたなって感じはしますね。

ヨシキ『マレフィセント』★2みたいな映画が「作られてしまう」方向へシフトしたと。ええと、2000年代初頭あたりはなんだっけ……えっ、嘘、『サンタクロース2』なんてあったのか(『サンタクロース・リターンズ! クリスマス危機一髪』02年)。バッカじゃなかろうか。でもまあ『バンビ2』があることを考えたら、それも通常運転の範疇なのかな。そういえば『ナショナル・トレジャー』(04年)というのもあった。

ホーク なぜかブラッカイマーとの謎の合体がありましたね。

ヨシキ「カリブの海賊」の映画化もそうだもんね。しかし、なんで馴染み深い「カリブの海賊」を使わずに、『パイレーツ・オブ・カリビアン』にしちゃったんだろ。ゲーム原作の『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(10年)というのもあった。あっ、それを言ったら同じ年に『トロン:レガシー』という爆弾もあった。2012年の『(火星の)ジョン・カーター』は、僕は好きだけど評価は散々だった。


 でもやっぱり、そんなころでも『くまのプーさん』(11年)のような素晴らしい作品もあったり。アシッド感高めのサイケデリックな感じで良かったな、『くまのプーさん』は。2015年にはやっぱりディズニーランドのアトラクション……というか、区画の映画化で『トゥモローランド』も登場。

ホーク 調子に乗っている。ディズニーのライブアクション路線。

ヨシキ そしてついに、ニュー・ディズニーの『美女と野獣』の「実写化」に手をつけてしまい、地獄の扉が完全に開いたと。“実写”の『アラジン』、“実写”の『ダンボ』、さらに“実写”の『リトル・マーメイド』も製作中。『メリー・ポピンズ』の続編『メリー・ポピンズ リターンズ』もやってしまった。素晴らしいディズニーの文化遺産を、ディズニー自身が食い潰している。『バンビ』の“実写”もやる予定があるらしいけど、本当にやめてほしい。


資本主義が当たり前、映画が製品となった世界


ヨシキ ディズニーに限った話じゃないけど、後期資本主義、あるいは末期資本主義になって、資本主義が文字通り暴走している感がすごくある。スラヴォイ・ジジェク★3が言うように、資本主義があまりにも「自明のこと」と見なされていて、そうでない世界などありえないかのような感覚にみなが陥っている。ジジェクは「世界の終末を想像するより、資本主義の終わりを想像することのほうが今や難しくなった」と言ったんだ。冷戦が終わって以降、その感覚がすごい勢いで加速して、資本主義が何もかもを飲み込んでしまう。映画も「商品」や「製品」としての側面ばかりが強調されるようになり、観客も「製品」を消費するようにして作品と向き合うようになった。あるいは「製品」をチェックする検品係のような目線を持つようになった。

ホーク 確かにやたらと売れた、売れないということを観客が気にするようになった感はありますね。

ヨシキ 作品を褒めるにせよ(けな)すにせよ、なぜかその作品が生まれるにいたった社内事情みたいな話が普通に出てくる。研究者とかならわかるよ。だけど『スパイダーマン』観るときに、マーベルのお家事情を知ってるかどうかは関係ないはずだよね。

ホーク おそらくマーベル・スタジオが始めたんでしょうけど、向こう3~4年のロードマップをバーンと出すでしょう。「こんなに作ります、3年先まで決まっています」って言うじゃないですか。あれは昔、エンパイア・ピクチャーズ★4とかがやっていた、これだけ作るからお金ちょうだいってヤツと同じですかね。

ヨシキ うん。簡単なシノプシスと派手なポスターで企画を売り込み、出資者を募るやり方。

ホーク それをカンヌとかでやっていたじゃないですか。

ヨシキ マーベルはそれより、車の会社とか、アップルの新製品発表会みたいな感じ?

ホーク ああ、そんな印象を受けましたね。でも、マーベル・スタジオがそれをやったのは、まだなんとなくわかる気がするんです。ディズニーに買われる(きわ)(きわ)のところで結果を出していかなきゃいけないので、うちはこれだけやりますって、ぶち上げる理由があったと思うんだけど。しかし一昨年くらいに、親会社のディズニーがまるで同じことをやったじゃないですか。ビックリしたわけ。マーベルから、スター・ウォーズから、自前のディズニーから、全部3カ年計画で、『ダンボ』とか『メリー・ポピンズ』とか、バーンと並べて、もう空いた口が塞がらなかった。なぜそんなことをする必要があるのか。


 ──そうですよね。もはや単なる商品説明じゃないかと。ジャパネットたかたと変わらない。

ヨシキ それも資本主義社会が永遠に続く中における、不老不死の存在としての法人というか、企業に対する信仰が揺るがないからだよね。地獄のサイクルを永遠に回し続ける決意でもある。


 ──とにかく大きくする、大きくして続ける、というのがボブ・アイガー★5の方針なんでしょうか。

ヨシキ ボブ・アイガーはピクサーを買収して、それからルーカスフィルムも買収して。

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