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体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方
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くらし
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第5章 「原因不明の身体症状」との付き合い方

『体にあらわれる心の病気 「原因不明の身体症状」との付き合い方』
[著]磯部潮 [発行]PHP研究所


読了目安時間:30分
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私がクリニックで行っている治療


 これまで述べたように「身体表現性障害」はDSM-Ⅳでは、除外診断的な病名です。しかし、実際の臨床場面において、「原因不明の身体症状」を訴える多くの患者さんに対してつける病名としては、現在のところ「身体表現性障害」しか妥当な病名は存在しません。第3章で述べたような一般身体科における病名、例えば心身症だけでは、「原因不明の身体症状」を訴える多くの患者さんの病名をカバーしきれません。「身体表現性障害」は精神科領域の病名ですが、今後、一般身体科でも精神科でも、「原因不明の身体症状」を訴える患者さんの病名は、「身体表現性障害」に統一されるべきであると、私自身は考えています。病名が統一されてこそ、「身体表現性障害」の研究が進んで、「原因不明の身体症状」を訴える患者さんの苦しみを和らげることが期待できます。


 現在、私はメンタルクリニックを開業していますが、私のところのような個人開業のメンタルクリニックにおいても、本書のような「原因不明の身体症状」を訴える患者さんは、通院患者さんの約一・五割程度も存在します。総合病院精神科と比較しても、その割合はほぼ同じです。私のクリニックは都市近郊にあって、都市部のクリニックより患者さんの年齢層が比較的高いために、身体症状を訴える患者さんが多いのではないかとは考えられますが、それを考慮に入れても、「原因不明の身体症状」を訴える患者さんはかなりの数に上ります。


 そういった患者さんの多くは、他の総合病院や内科系クリニックの検査では異常は見出されず、それでも何度も繰り返し身体症状を訴えるために、医師に邪険にされたり、精神的におかしい、などといわれて、自ら私のクリニックを受診する方たちです。


 これらの患者さんが、初診のときに訴えることは、身体症状はもちろんですが、多くの場合、まず自分の身体症状の原因はなんなのかということです。そこで私はこれらの患者さんを最初に診るときには、まず患者さんの訴える身体症状に耳を傾けることに留意します。これらの患者さんのほとんどは他の医療機関では、十分に自分の訴えを聴いてもらっていないと感じているので、初診時に訴えを傾聴することは患者さんとの信頼関係を築くために非常に重要な要素となると考えられるからです。


 そして身体症状について、さらに検査(血液検査、CT、MRIなど)が必要と考えられるときは、まず検査を行います。そしてその検査でも異常がなかった場合、あるいは他の医療機関で十分に検査が行われている場合には、検査では説明できない身体症状が現実には非常にたくさんあることを患者さんに説明します。その上で、患者さんが苦しんでいる身体症状を和らげるために、どのような方法を選択するのかを話しあいます。


 具体的な方法としては、一つは薬です。患者さんが精神的要因を認めたがらないときは、「あなたの身体症状は、あなたがおっしゃるように確かに精神的な関与はないかもしれません。しかし私の臨床経験では、あなたの身体症状と同じような症状を訴える方が、このお薬を飲んで、症状が非常に改善したことがこれまで何度もありました。もし飲んでみて合わなかったら、いつでも中止してかまいませんので、しばらくお薬を飲まれたらいかがでしょうか」というように、患者さんに説明します。


 服薬により「原因不明の身体症状」が急速に改善されることはあまりありませんが、服薬の継続によってある程度は改善が期待できます。また症状を悪化させることもほとんどありません。したがって絶対に薬など飲みたくないという患者さん以外は、服薬は有効と考えています。また服薬を続けるということは医師と患者との信頼関係の上に成り立つことなので、この意味でも服薬は身体症状の改善に一役買っているかもしれません。


 もう一つの治療の方法は身体的な対症療法です。私のクリニックで行っていることは、点滴と電気治療です。具体的には、身体症状として疲労感や全身倦怠感を訴える患者さんが非常に多いため、点滴を行います。点滴をある程度定期的に続けていると、確実に疲労感や全身倦怠感が軽減していきます。一進一退の患者さんもいますが、それでも点滴を続けながら、自らの生活スタイルを構築できるようになっていきます。


 また痛みや痺れを訴える患者さんも多いため、痛みや痺れの部位に電気治療を行っています。この治療も点滴と同様に、継続的に行うことで、痛みや痺れが弱まります。なかなか改善しないと訴える患者さんも、徐々に自らの生活ペースを作っていきます。


 どうしても身体症状に固執して、服薬も身体的治療も拒否するときは、患者さんの同意が得られるならば、とりあえず臨床心理士によるカウンセリングを行います。そしてカウンセリングを継続的に行って身体症状が軽減するならば、カウンセリングを続けていきます。またカウンセリングによって、服薬を含めた身体的治療への合意が得られるようになれば、治療をそちらの方向にきりかえていきます。


 以上の三つの方法が現在、私がクリニックで行っている「原因不明の身体症状」を訴える患者さんに対する治療になります。ここで最も重要なことは患者さんと医師を含めたクリニック職員との信頼関係です。患者さんが自らの身体を安心して委ねられるクリニックであることが大切なので、医師である私だけでなく、臨床心理士、ケースワーカー、看護婦との信頼関係も必要と考えています。クリニックのスタッフを信頼して身を委ねることができれば、患者さんの不安は和らいでいきます。

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