『2週間で感動的に元気になる! 医者の「色着きごはん」』
[著]刑部恒男
[発行]すばる舎
「お茶」には強力な「抗酸化作用」があり、〈老化〉を防ぐ
◆緑茶のカテキン、グルタミン酸、ビタミンCの凄い効果
先日の基本的な話で、太田さんも前向きになったようです。
今回からは、いよいよ具体的に、「色の着いた食品」の説明です。
【太田さん】センセ、今日は「緑」の食品ですか。
【刑部先生】まず、緑茶から始めましょうか。
【太田さん】お茶は緑色だけでなく「茶色」もありますが……?
【刑部先生】茶色は、焙煎してからの色。緑茶も紅茶もウーロン茶も、葉っぱのときは緑です。これがかなりの効果がある!
鎌倉時代の栄西が「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり」と語っています。
緑茶は、強い抗酸化作用で、認知症、脳梗塞、がんが50%減少すると報告されている長寿の妙薬でもあります。
お茶はたくさんの種類がありますが、すべてツバキ科「チャ」の同じ葉っぱからできています。緑茶が自然発酵して茶褐色に変化して、ウーロン茶、紅茶になります。
緑茶は、渋みのある「カテキン」が抗がん作用、苦みのある「カフェイン」が集中力、旨味のある「グルタミン酸」が体内で「ギャバ」になり血圧を下げ、ビタミンCがレモンよりも4倍含まれています。
すでにお話ししたように、このビタミンCには強い抗酸化作用があります。実に健康によい食品なのです。
これから話すお茶のカテキンも、強力な抗酸化作用があります。つまり体が錆びる(老化する)のを防いでくれるのです。
◆緑茶1日2~5杯で、認知症と脳梗塞を防げる
緑茶のカテキンは酸化を防ぎ、炎症を防ぎ、さらにがん、認知症、脳梗塞、高血圧、糖尿病、肥満、アレルギー、食中毒などを予防します。
緑茶の乾燥茶葉重量のうちの15%近くが、カテキンそのものなのです。
【太田さん】ちょ、ちょっとセンセ、そんなに一気に言われても……。
【刑部先生】そうですね、ゆっくり説明しましょう。まず認知症と脳梗塞を半減させます。
【太田さん】それは凄いじゃないですか!
緑茶を1日2杯以上飲む人は、認知症のリスクが46%、つまりほぼ半減したと報告されています*5。さらに、脳梗塞の死亡リスクでも緑茶を1日5杯以上飲む男性は42%低下し、女性では62%も低下しています*6。
◆緑茶は、「脳」を守っている
カテキンがどのようにして認知症や脳梗塞を予防しているか説明しましょう。
脳はエネルギー活動が活発で、全身の酸素消費量のうちの20%を占めています。ということは、最も酸化されやすい環境にあるわけです。
【太田さん】センセ~、さらりとおっしゃいますが、それ凄くまずいでしょ。
【刑部先生】そう、実にまずい。
【太田さん】人間の体でいちばん大事な「脳」が、最も酸化されやすい……。
【刑部先生】ですから、ちゃんと酸化されにくいようになっているんです。
要するに、脳には、異物の侵入を防ぐための厳しい防衛システムがあります。これが「脳関門(血液脳関門)」機構です。そのため、大切な抗酸化物質まで通過しにくい。しかし、カテキンはこの防衛システムを通過できるのです。脳関門は、脳血管のすき間を狭くして異物の侵入を防ぎ脳に必要な栄養だけを通過させています。この脳関門を通過できるのは主に脂溶性(油に溶けやすく、水に溶けにくい)のモノです。
抗酸化物質であるビタミンCは残念ながら水溶性(水に溶けやすく、油に溶けにくい)なので、ここを通過できません。
しかし、脂溶性のビタミンEと脂溶性と水溶性の両面性をもつカテキンは脳関門を通過できます。するとどうなるか……。
脳関門を通過したカテキンとビタミンEは、脳神経細胞や細胞周囲の酸化を抑えます。それによって、AGEが生まれることも防げます。さらに「アミロイドβ(要するに老廃物)」の蓄積を抑制して認知症を予防します。
【太田さん】あ、ベトベトの砂糖ですね。
【刑部先生】そう、それがAGEでしたね。
【太田さん】その脳関門というものを通過してカテキンが活躍すると、脳梗塞なんかも防げますよねえ。いいことを聞きました。
さらに、カテキンは脳血管動脈でも抗酸化作用を発揮します。脳血管の動脈硬化を抑えることで脳梗塞・脳出血も予防しています。
◆緑茶を1日5杯飲めば、前立腺がんが50%減少する
緑茶のカテキンには抗がん作用があります。
お茶産地の静岡県中川根町では、全国平均に比べ胃がんの死亡率が男性は20%、女性は30%も低いのです。また、緑茶を1日5杯以上飲む男性は進行性の前立腺がん発症リスクが48%も減少します*7。緑茶を1日5杯以上飲むだけで、前立腺がん、認知症、脳梗塞が50%減少する事実はもっと知られてよい研究成果です。
日本人の3大死亡原因である、がん、心疾患、脳血管疾患をそれぞれ50%減少させる緑茶こそ、色の着いた食品のトップバッターですね。しかも、毎食後緑茶2杯飲むだけで1日5杯以上になりますから習慣化はとても簡単です。
◆緑茶には食中毒予防効果がある
緑茶の効果はこれだけではありません。さらに、抗菌作用もあります。
緑茶1mlに1万個のO-157を入れると5時間後にはすべて死滅します*8。
寿司屋では〈生もの〉を食べますね。しかし「あがり」の緑茶には、食中毒予防効果があるので、とても理にかなっているのです。虫歯・口臭予防効果もあるので、食後の緑茶習慣はさまざまな恩恵を与えてくれます。
ただし、できれば冷たいお茶ではなく、温かいほうがいい。健康なお年寄りは、ほとんど冷たいものは飲みません。温かいお茶をすするのが好きな人が多いですね。
そもそも冷たいものは体を冷やすので、健康にはあまりよくないのです。
【太田さん】冷えたビールなんか最高なんですけどね。
【刑部先生】まあ気持ちは分かるけど、お腹を冷やすと下痢のもとにもなります。それに、体温が下がれば外敵を熱でやっつけることもできない。
【太田さん】だけど、熱が高いほうが危なくないですか?
風邪で熱が出るのは、体がウイルスと戦っているからです。これが免疫機能です。ですから、よほどの高熱でない限り解熱剤は飲まないほうがいい。
◆ウーロン茶は脂肪を排泄させ、ダイエット効果あり!
ウーロン茶と紅茶は色が茶色だから茶色の章で紹介するのが妥当かもしれませんが、緑色の「緑茶」の親戚なのでこのまま話していきたいと思います。
半発酵茶であるウーロン茶は、発酵過程でカテキン同士が結合されウーロン茶ポリフェノールができます。
マウスの実験で脂肪の多い食事を与えた場合、ウーロン茶を10週間与えたマウスでは肥満と脂肪肝が抑えられ、脂肪排泄量が30%多くなっていた──という報告があります。ウーロン茶ポリフェノールが脂肪分に吸着して排泄させるからです。
脂っこい中華料理にウーロン茶はピッタリですね。
◆紅茶1日2杯で卵巣がんが30%減少する
紅茶には緑茶と同様、がん予防効果があります。紅茶を1日に2杯以上飲むだけで、1杯以下しか飲まない人と比べて、卵巣がんのリスクは32%も低くなります*9。
紅茶に含まれるカテキンは無色ですが、発酵することで2つのカテキンが1つになると、「テアフラビン」というものに変化して橙赤色になります。このテアフラビンには、腸での脂肪の吸収抑制によるダイエット効果があり、抗ウイルス効果もあります。
【太田さん】要するに緑茶にも紅茶にも、がん予防効果があり、紅茶にはダイエット効果も……。
【刑部先生】そうです。ちなみに、インフルエンザウイルス予防にはカップ1杯の紅茶を、5~10倍に薄めたうがいがお薦めです(日本大学薬学部)。
紅茶や緑茶に含まれるカフェインは、コーヒーより少なめなのでほどよい集中力効果もあります。コーヒーのカフェイン量に対して、緑茶および紅茶はそれぞれ3分の1の量です。