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BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは
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人文・科学
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01 そもそも、モチベーションとは何か?

『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』
[著]青砥瑞人 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


読了目安時間:9分
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 モチベーションという言葉は、みなさんも日ごろからよく耳にすると思う。

「そもそもモチベーションとは何か」

「モチベーションは、どのような仕組みで高くなったり低くなったりするのか」


 本章では、こうしたモチベーションの本質について、神経科学の観点からわかりやすく解き明かしていきたい。


 ただし、最初からモチベーションに絞って整理するのは非常に難しい。そこで、まずはモチベーションに関わる用語の解説からスタートしてみたい。そのうえで、人間の脳を細胞、分子レベルまで微細に解きほぐす神経科学という学問が、どのようなアプローチでモチベーションを捉えているかについて紹介していく。



 モチベーションといってもさまざまだ。


 仕事に関するモチベーションだけでなく、食べ物を食べたいというモチベーションもある。眠いから寝たいというモチベーションもあれば、スポーツで勝ちたいというモチベーションもある。モチベーションを深く理解するには、多様なモチベーションについて整理する必要がある。なかでも、人間にとってもっとも重要なモチベーションを、四つのカテゴリーに分類して紹介していく。



 ただし、モチベーションだけを見ていても、モチベーションの全体像を理解することはできない。そこで、モチベーションの大前提となる脳のコンディションを紹介したい。モチベーションのシステムを解剖し、これまで脳の中身についてあまり触れてこなかった方にも容易に理解できるよう、かみ砕いて説明する。


 さらに、モチベーションを動かす「材料」について、神経科学の視点から整理したい。モチベーションの源泉、モチベーションと物理的な痛みや精神的な痛みとのリンク、モチベーションとお金の関係など、さまざまなトピックについてお話ししていく。




  「自分を高める」ためにまず必要なのは「メタ認知」



 最初のトピックとして、モチベーションに深く関係する用語についてご紹介したい。


 ビジネスパーソンであれ、自らビジネスを営まれている人であれ、スポーツ選手であれ学生さんであれ、あなたには「自分を高める」という命題があると思う。その観点に立つと、どうしても避けては通れない脳の重要な機能がある。


 それが「メタ認知」と呼ばれるものだ。


 メタ認知は、「自分自身を、客観視、俯瞰視」した認知の状態である。自分自身のことを主観的に捉えるだけでなく、客観的に捉えてみよう、一面的に捉えるだけでなく俯瞰的に捉えようというのがメタ認知の基本的な役割である。



 ここに、面白い実験がある。

「鏡で自分の顔をのぞいてごらん」


 誰かに唐突にそう言って、鏡をのぞかせてみてほしい。そして、その様子をつぶさに観察してほしい。よく見ると、きっと何人かは鏡をのぞいた瞬間に目が大きくなるはずだ。他人に見えている自分と、自分に見えている自分との変換点である。


 つまり、他人が見ている自分の姿と、自分に見えている自分の姿は、ほんの少しずれている可能性がある。だからこそ、主観的な自己を知るだけでなく、客観的な自己を知ることが大切な学びとなる。



 そこで重要なのは「意識的に注意を傾ける」姿勢である。


 あなたは、家から駅までの道のりにある電柱の数を覚えているだろうか。きっと何百回、何千回と歩いているはずだと思うが、そこに何本の電信柱があったかなど、多くの人は答えられない。なぜだろうか。


 たしかに電信柱という視覚情報はあなたの脳にも届いているはずだ。しかし、脳は脳に届けられた情報すべてを記憶するわけではない。そのほとんどが脳の中で捨てられる。意識的に注意を払わないような情報は、さほど大切な情報ではないから、わざわざ脳に記憶情報として保存させないようにできている。


 脳は、情報を記憶する仕組みも持っているが、何でもかんでも記憶できない仕組みを持っているとも言える。注意が向かない情報は脳には残らないのである。だから多くの人が電信柱の数を答えられない。



 このことは、自分という情報にも当てはまる。自分に意識的に注意を向けない限り、自分の脳に自分の情報が書き込まれないのである。さらに自分のことはよくわかっているという錯覚から、ほとんどの人は意識的に自分を見ようとしない。自分であろうと電信柱であろうと、意識的に注意を向けない限り脳に学習させるのは非常に難しいのである。


 だからこそ、自分を客観的に捉えてみる時間や学習が求められる。最近は、OECDもメタ認知能力が21世紀において必要な能力として非常に重要だと言っている。


 メタ認知の本質的な意義は、自分のことを客観的に、俯瞰的に見ることで、自分自身の脳に自分自身についての情報を書き込み、それによって「自分をもつ」ことなのである。自分の感じ方、考え方、振る舞い方を知れば、自分で感じ、考え、行動する、自律的な脳が育まれるのである。*1



 自分と向き合うことの大切さは太古の昔から言われてきた。いまに始まったことではない。

「汝自身を知れ」


 古代ギリシア時代の格言が、何千年もの時を経てなぜいまもなお脈々と伝えられているのだろうか。そこにはきっと意味があるはずだ。おそらく自分を知るのは難しく、だがしかしそれだけ成長に価値があると歴史も物語ってくれていると言えよう。



 神経科学の世界でも、自分をメタ認知している状態の脳の機能が明らかになりつつある。


 前頭前皮質(PFC=prefrontal cortex)は、おでこの裏あたりにある脳の前側の部分である。そのなかでも「ロストラテラル」と呼ばれる前側のやや側部側の脳部位(rlPFC)が、自分を俯瞰視しているときに活用されることが分かってきた。*2


 したがって、このrlPFCの働きを探究することで、自己の俯瞰視とはそもそもどのような状態なのか、どのような脳の使い方がメタ認知なのかが明らかになる。つまり、何をもって俯瞰と言えるのかがわかれば、自分との向き合い方が見えてくる。




  自分をメタ認知する習慣を持つ



 神経科学の世界では、次のような言葉をよく耳にする。

「Use it or Lose it」


 日本語にすると「使われれば結びつき、使われなければ失う」となる。


 人間の脳には、およそ一千数百億個の神経細胞がある。それぞれの神経細胞はシナプスと呼ばれる構造体によって結びついている。神経細胞は、使われれば使われるほど結びつきやすくなるが、使われないと刈り込み(プルーニング)などが行われる。なぜなら、シナプスを保有しておくのにエネルギーを要し、使われていないシナプスを保持することはエネルギーの無駄遣いになるからだ。

「使われていないのに構造として持っておく必要はない。刈り込め」


 この命令が脳の中を駆け巡る。これは適応的な機能である。この刈り込みは、人間が生まれてわずか数ヵ月後から始まる。脳の部位によってシナプスの数の推移は異なるが、もっとも遅く発達する前頭前皮質でも、2歳でシナプス数のピークを迎え、刈り込みがスタートする。*3


 そこから徐々に減っていくが、まだ子どものうちは十分なシナプスがある。子どもは物覚えがよく、大人になるにつれて悪くなるのは、シナプスの数が関連している。


 子どもはシナプスを数多く持っていて、その状態をより強固にしようとする「変化」が学習になる。一方、大人はシナプスが少なくなってしまったなかで神経細胞同士を「つなげていく」作業も必要になる。つなげて、さらに強固にするために二重のエネルギーを要する。そのため、学習は大人になるにつれて時間がかかることがわかっている。


 自分をメタ認知する習慣がない人は、その脳部位が「lose it」(使われなくて失っている状態)になってしまっている可能性が高い。もちろん、完全に機能がなくなってしまうことはない。誰にでも、ふとした瞬間に自己と対話したり、省みたりする瞬間はある。しかし、メタ認知をする頻度に応じて、その脳部位の結びつきの強度は変わっていく。したがって、メタ認知に関与する脳を意識的に「use it」することでメタ認知脳は育まれるのである。その育みは、モチベーションの観点においても重要になる。なぜなら、他の誰でもない、あなた自身のモチベーションを高めるために、自分の内側で起きる自分のモチベーションと向き合う必要があるからだ。




  自己の感情をメタ認知する



 メタ認知をする際にはいくつかのポイントがあるが、モチベーションに関わるものをご紹介しておく。


 人間がある行動を起こす前には、大きく分けて二つの脳のシステムの情報を参照している。一つは思考系、もう一つは感情系というシステムだ。これまで思考系と行動系はさまざまな研究が行われてきたが、感情系に関しては手つかずの状態だった。どうしても抽象的になってしまうことから、ブラックボックスのように扱われてきた。


 ただ、ここ5年~10年で、人間の感情が神経科学によって紐解かれ始めている。特定の感情が発露しているときの脳部位や、その際に特徴的に見られる神経伝達物質と呼ばれる化学物質、あるいは神経伝達物質を受け取るレセプターの機能など、脳のミクロの世界から解明が始まっている。*4



 人間の行動と思考を理解するには、密接に関連する感情を理解することなしには難しい。感情の一つであるモチベーションも、行動や思考に影響する。モチベーション以外にもさまざまな感情があるが、自分の感情を見ずに蓋をしていては、自分の行動力や思考はいつまでたっても高まらない。自分のパフォーマンスを高め、成長するためには、自分の感情や感覚に注意を向けることがメタ認知の大切なポイントなのである。


 何かを極める人は、必ず自己と向き合い、自己についての考察を深いレベルで行い、感情や感覚を捉えている。


「自分が何をどう感じて、どのように打てているかを説明できたとき、超一流の仲間入りができた」(NHK BS1 「日本人メジャーリーガーの群像」より)



 イチローさんの言葉である。単に「どのように打てているのか」と振り返るだけでなく、「どのように感じているのか」という感覚や感情にも目を向ける。イチローさんは淡々とおっしゃっているが、実に奥深い言葉である。


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