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BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは
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人文・科学
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02 クリエイティビティを捉えるための前提と複雑性

『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』
[著]青砥瑞人 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


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  神経科学の「マクロ」と「ミクロ」



 神経科学の視点からクリエイティビティを解き明かす着眼点として、ミクロ、マクロ、ネットワークについて簡単にまとめておきたい。


 マクロと呼んでいるのは、脳の各パーツの解剖学的な塊の機能や役割を中心に捉える視点である。たとえば、脳の前頭前野のいくつかの脳部位がどのように機能しているか、後頭葉にある複数の脳部位にはどのような機能があるか、50以上に分解された「ブロッドマンエリア」と呼ばれる脳の皮質それぞれの機能の相互作用はどうか、海馬や扁桃体はどんな機能かなどである。



 一方のミクロとは、マクロを構成する神経細胞やグリア細胞など、「脳の中の細胞レベルでどのようなことが起こっているか」を把握する視点だ。また、細胞よりさらに細かい分子レベルで起こっていることを読み解くのも、ミクロの世界である。


 近年、ミクロ、マクロで捉えた脳のさまざまな機能が、互いに関連し合ってネットワークとして私たちの行動や感情や思考を動かし、クリエイティビティを動かしていることがわかり始めてきた。




  脳機能は「時間軸」で捉えることも重要



 そこでもう一つ重要になるのが「時間軸」で捉える観点だ。


 これまでは時間を「点」で取った脳データを基に分析していた。だが、使われる脳機能は時間に伴って変遷していく。点では正確な分析ができなかった。


 時間を連続的な線形の軸として捉えることができるようになったのは、脳を可視化する技術の進化によるものだ。科学技術の発展に伴って脳の状態を見る研究機材も進化したからこそ、クリエイティビティを表出させるさまざまな系、機能、システムが時間とともに変遷していく姿を捉えることが可能になった。



 もう一つ、時間をメタ的な視点で捉えることも大切だ。瞬間、瞬間に変化するクリエイティビティを捉えるのも大切だが、変化と反応に応じて書き込まれていく記憶は、時間とともに変化し、クリエイティビティに大きく影響する。


 すでに記憶についてはご紹介しているが、記憶は単なる抽象的な概念ではなく、脳に存在する神経細胞の物理的な変化で説明できるようになった。それを新しい視点で再解釈してみよう。このとき、神経科学でよく使う「記憶痕跡モデル」が理解を助けてくれるはずだ。


 図25に書かれた小さな四角形は、それぞれが記憶される神経細胞の細胞群とする。その四角形の濃淡は、記憶の状態の強弱を表している。薄ければ記憶の定着度合いが弱く、濃ければ記憶の定着度合いが強いことを表している。強ければミエリン鞘やレセプターなどの物理的構造が変化し、エネルギー効率の高い神経細胞群になる。エネルギー効率の高い神経細胞群をうまく活用することは、複雑で分散的なクリエイティビティの発揮には欠かせない。この濃淡は、繰り返し使われることで変化し、クリエイティビティに多大な影響を与える。





 このように、脳の解剖学的な位置とそれに伴う系を3D的に捉えることに加え、時間軸も踏まえて4D的に脳を捉えていくのが、新たなクリエイティビティの見方として非常に重要になってくる。



 しかし、4D的な捉え方はそれほど単純ではない。


 脳の活動状態を3Dで見たとしても、単に活性化しているところだけを見ればいいわけではない。どの脳部位が不活性化し、機能が抑制されているかを把握するのも重要だ。しかも4Dに関しては、時間軸を点から線に変えるだけでなく、時間を経ることによって記憶に刻まれる記憶痕跡、(Memory Trace)すなわち記憶の濃淡も捉える必要があるので、一筋縄ではいかない。




  クリエイティビティはいくつもの脳機能と複雑に関連する



 図26は、2016年に発表されたクリエイティビティに関する論文をもとにイラスト化した*1。あるピアニストに、異なるディレクションをしてピアノを弾いてもらったときの脳の状態を研究したものだ。




 A群は、楽譜通りに弾いてもらったとき、つまりピアノの鍵盤を意識して弾いてもらっている様子がわかるだろう。反対にB群は、楽譜通りに弾くというより、むしろ「悲しみや喜びなどの特定の感情を表現すること」を意識して弾いてもらっている様子である。同じピアノを弾く行為でも、意識の仕方によって、もっと言えば「心を込めたかどうか」によって使われる脳のあり方は異なるかが研究されたのである。結果は、使われる脳の領域に大きな違いが出た。


 ということは、同じピアニストが同じピアノを弾いても、決められた曲を決められた通りに弾いているときと、何らかのクリエイティブな操作をしているときでは、使われている脳の部位は違うということだ。では、クリエイティビティを発揮しているときにどんな脳がどのように使われているのだろうか。


 図27は同じ論文から引用しているが、左から右に向かって2秒、4秒、6秒、8秒と時間軸が刻まれている。脳の中でクリエイティブな情報処理をしているときに、どのような脳部位が使われているか、時間軸に沿って変遷を観察した研究である。




 CHAPTER1のモチベーションに関して言えば、報酬系と呼ばれる脳の仕組みを中心にさまざまなシステムとの関連を見れば解明できた。しかし、クリエイティビティは多岐にわたる脳部位それぞれが時間とともに中心を変遷させながら、他のシステムと複雑に関連して機能している。



 こうした複雑性のため、クリエイティビティはどこか抽象的で捉えどころがなく、先天的なものと考えられてきたのだろう。複雑な脳機能を偶発的に活用し続けることができた人が、偶発的に高いクリエイティビティ能力を身につけ、その力を発揮していたということだ。


 しかし、一見すると同じに見える行為でも、クリエイティビティを発揮しているかそうでないかで脳の使われ方の違いが見えてきた。そうなると、偶発的に捉えられていたものを「クリエイティビティ能力を発揮する」ための必然として見ることができるようになる。クリエイティビティをもたらす脳の仕組みを知ることで、意識的にクリエイティビティを高めるためのヒントにもなる。



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