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美とリベラルアーツ 美意識を高め、創造性を育む
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生き方・教養
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第六章 絵画を観て、考える マネから北斎まで

『美とリベラルアーツ 美意識を高め、創造性を育む』
[著]阿部博人 [発行]PHP研究所


読了目安時間:25分
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 マネの絵を観ると、何か、違和感や不思議な感じにとらわれます。華やかなのか、暗いのか。光なのか、影なのか。描かれている要素や人物たちはどこかちぐはぐで、美しいものがあれば、美しいとも思えないような奇妙な印象の絵画もあります。


 エドゥアール・マネ(一八三二―一八八三)は、西洋絵画に革命を起こしました。睡蓮のモネに人気があり、日本では印象派が好まれるのに対して、マネはそれほどではありません。マネの絵を観て考えることは、西洋絵画史と日本の浮世絵を知ることであり、さらには、鑑賞者である私たちの理性と感性を喚起することにつながります。


 マネはレアリスムのクールベやロマン主義のドラクロアの後に続き、印象派の少し前の世代に当たります。マネはイタリアとスペインの絵画を学び、模写を行い、また自身の作品に借用しています。初期にはルーベンスの作品を踏襲しています。特にティツィアーノとベラスケスに大きな影響を受けました。


 このようにマネは古典絵画の作例を参考にして、作品に構図やモティーフや要素を大胆に取り入れていきました。


 もう一つ、学んだのは日本の浮世絵です。いくつもの絵で、構図や彩色など浮世絵の手法が見られます。


 マネは西洋絵画の伝統と様式を大きく変え、印象派を準備し、近代絵画と、さらには現代アートを可能にしました。西洋絵画を転換させたこの革命家は、芸術史上に特異な足跡を残しました。


 レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》とともに、パロディーが最も作られたのが、マネの一大スキャンダルとなった《草上の昼食》と《オランピア》です。ドガ、セザンヌ、ゴーガン、ピカソの作品が知られています。

《バルコニー》(口絵③)はフランシスコ・デ・ゴヤの《バルコニーのマハたち》に着想を得て、この絵を下敷きに、フランス現代のブルジョアの都市生活を描いたと言われています。


 この作品も不思議な絵です。光源は絵の中にはなく、キャンヴァスの外の正面にあります。どぎついとでも言える緑の雨戸とバルコニーの鉄さくによって、画面は垂直線と水平線で構成されています。人物は黒と白で描かれ、右の女性(モデルはヴァイオリニストのファニー・クラウス)は宙に浮いているようで、幽霊のようにも見えます。左の女性(モデルは画家ベルト・モリゾ)の両目は大きく、眼差しはきつい感じです。二人の背後の暗がりには男性が立っています(モデルは画家アントワーヌ・ギュメ)。男性の左にティーポットを持った少年の姿があるのですが、ほとんど見えません。少年はマネの子とも言われますが不明です(シュザンヌと結婚する前に生まれましたが、マネの父親の子とも言われています)。


 この構図には奥行きはなく、キャンヴァスの外の正面から照らし、逆光で奥行きが見えません。三人の視線はばらばらで別の方向を見ています。お互いに交流はなく、孤立しているような印象を受けます。キャンヴァスの前こちらからの光と奥行きの暗がり、バルコニーと奥行きという外部と内部、白と黒、人物と静止しているようにも見える表情は、生と死を表象しているかのように思えます。


 マネのパロディー作品で最も有名なのが、三人の人物のかわりに三つの棺を置いたマグリットの《遠近法Ⅱ:マネのバルコニー》(口絵④)です。フーコーはこの作品ついて、「三人の人物がそこに浮かび上がらせているのはまさしく、そうした生と死の境界なのです」と述べています。(注一)


 人物を棺に置き換えたことに対して、マグリットは「マネが白衣の人物たちを見ていたところに私が棺を見るように仕向けたものはといえば、私のタブローに示されている像なのですし、そこでは『露台』の舞台装置が棺を置くに適していたのです」と言います。(注二)


 棺は空虚な物質であり、死をイメージさせます。「人間(生きているもの)」イコール「棺(死んでいるもの)」なのです。


 マネの絵画の集大成が《フォリー・ベルジェールのバー》(口絵⑤)です。病を押して一八八一年末から死の前年の一八八二年の初めにかけて制作し完成させました。フォリー・ベルジェールはシャンソン、オペラ、バレエ、曲芸など多彩な催しものでにぎわうパリの大衆文化を象徴する劇場です。マネはアトリエにフォリー・ベルジェールのバーを再現し、描きました。


 画面の中央には女性がいて、シュゾンという名の実際のバーメイドです。絵は、このバーメイドを中心に据えて、描いたものです。その背後には女性の姿を映している鏡があります。

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