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再起は何度でもできる
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ルポ・エッセイ
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特別対談 「身体と心」について山中伸弥先生に訊いてみた

『再起は何度でもできる』
[著]中山雅史 [発行]PHP研究所


読了目安時間:31分
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中山 (やま)(なか)先生は市民ランナーとしても有名で、いろいろな大会に出場されていますね。自己ベストはどのくらいですか。

山中 三時間二十二分三十四秒です。二〇二〇年二月の京都マラソンで自己ベストを更新しました。

中山 三時間半を切るって相当ですよ!

山中 いやいや。僕も今年五十八歳になりますから、年齢との闘いです。

中山 若い頃にはラグビーをされていたとか。身体を動かすことが好きなんですか。

山中 もう、大好きで。中学、高校、大学の一年までは柔道をやっていたんですが、二年の時に膝の(こう)(じゆう)()(じん)(たい)を切ってしまい、全学(大学全体)の柔道部は激しすぎるのでやめました。その後、膝がだいぶよくなってきたので、三年生になると医学部のラグビー部に入りました。

中山 膝がよくなってきたというのは、医学的にどういう改善があったんですか。

山中 中山さんはよくご存じだと思いますが、(ぜん)十字靭帯と後十字靭帯は膝を前後に安定させ、回旋の制動にも重要な靭帯です。僕の場合は手術もしなかったので、いまだに膝はちょっとグラグラしますけど、ケガから数カ月すると、なぜか普通に走れるようになったんです。それで三年間、ラグビーを一所懸命やりました。

中山 柔道よりラグビーのほうが激しいスポーツじゃないかと思うんですけど。

山中 そうですね。中山さんほどではないですが、僕もケガは多くて。これまでに十何回か骨折しています。

中山 一〇回以上もですか。

山中 はい。柔道をやっていた頃は、畳と畳の間に小指が挟まって五、六回折りました。ラグビーでは鼻や肋骨を折り、それに加えて走りすぎのために、今で言うシンスプリント(けい)(こつ)()(ろう)(せい)(こつ)(まく)(えん)という(すね)(シン:Shin)の痛みにも悩まされて……。ものすごく痛かったんですが、X線撮影をしても何も写っていなくて、周りからは「大袈裟だ」と思われていたみたいです。

中山 検査しても異常が何も見つからないと、非常に不安というか、イライラしますよね。「こんなに痛いのに、アプローチの方法が見つからないのか」と思うと、嫌になってしまいます。

山中 そうなんです。僕が所属していた医学部のラグビー部は、冬の間はオフで、三月ぐらいから練習が始まりました。冬にラグビーができるのは強いチームだけですから(笑)。冬の間は自主トレでウエイトトレーニングに励んでいました。春になってチーム練習でダッシュを始めると、すぐに脛が痛くなって、一本走るたびに半泣き状態。なんでこんなに痛いんだろうと思って整形外科へ行っても、「Ⅹ線写真では何もないから大丈夫。痛かったら休みなさい」などと言われるだけで、(らち)があかない。そこで自分で勉強しはじめて、これはシンスプリントだなと気づいたんです。


   当時は一九八〇年代で、日本ではスポーツ医学が一般的にはまだあまり認識されていませんでした。それで僕は、卒業したら絶対にスポーツ医学をやろうと心に誓い、整形外科医になったんです。今は違うことをやっていますけれど。

中山 山中先生のようなお医者さんがいると、アスリートはとても助かるんです。ご自身でスポーツを経験されているから、プレーヤーの考えをわかってくれるし、痛みに対する僕らの不安や疑問も、よく理解してくれるので。

山中 アスリートのほうとしては、痛くても練習は続けたい。練習しながらケガをいかに治すかが重要だと考えられると思うのですが、整形外科では「しばらく休んでください」と言われることが多いと思います。

中山 そうなんですよ。単に薬を出してくれるだけだったりするんです。

山中 休めばたしかに痛みは少しおさまりますが、練習を再開すると、またすぐに痛くなったりしますよね。僕はほぼ毎日走っていますが、今も膝がすごく痛いんです。

中山 先生も膝が痛いんですか! それでもマラソンを走りきっちゃうんですね。

山中 昔よりシューズの性能がずいぶんよくなったので、痛みをごまかしながら走っています。


   中山さんは今、チームを組んでリハビリをされていますね。僕、中山さんのリハビリ体験を読ませていただいて、ハッとしました。膝が痛いのは膝だけの問題ではなく、脚全体や股関節を含んだ問題なんだと再認識させられました。股関節がちゃんと動かないと、膝に無理がいく。整形外科医だった僕が言うのも恥ずかしいんですが、「ああ、そうだ。自分の膝の痛みも、股関節からちゃんと診ていかなくちゃいけないんだ」と思って。初心に戻りました。

中山 先生、そこ大事なんです! 僕が先生に言うのも失礼ですけど。専門医は当然、痛いところに焦点を当てて「悪いのはここだ」と言ってくれますけど、痛みの原因は別のところにあるっていうことを、僕はいろいろな治療を受けるなかで学びました。リハビリのスタッフや、お世話になった人たちから、股関節や足首を柔らかくすることによって膝への負担を減らせると言われて、「なるほど」と思ったんです。

山中 僕、ついつい痛いところばかりストレッチとかやっちゃうんです。「人間の身体には、たくさん動く関節と、あまり動かない関節が交互に並んでいる」(前記)というところも興味深く読ませていただきました。股関節はたくさん動いて、膝はあまり動かない、足首はたくさん動く……。本当にそうだなと思って。

中山 やっぱり身体というのは、全部がつながっているんですよね。それぞれの部位には役割があって、それらがバランスよくスムーズに動くのがいちばんいい。たくさんケガをしたので、僕はそう感じています。

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