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群島の文明と大陸の文明
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歴史
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第4章 〈第三の生命〉

『群島の文明と大陸の文明』
[著]小倉紀蔵 [発行]PHP研究所


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4−1 「生命」は三つある


 前の章でわたしは、〈アニミズム〉的な生命観について述べました。そのなかで、孔子のいう「仁」は、〈アニミズム〉的な意味での〈いのち〉なのだ、ということを語りました。


 次に、この〈いのち〉についてくわしく説明してみようと思います。


 わたしは『新しい論語』(ちくま新書、二〇一三)という本で、〈第三の生命〉という新しい概念を提唱しました。

〈第三の生命〉というのは、「第三」ですので、〈第一の生命〉、〈第二の生命〉というのがあって、そのほかに〈第三の生命〉というのがあるということです。



 三つの生命を区分してみると、次のようになります。


〈第一の生命〉=生物学的生命、肉体的生命

〈第二の生命〉=霊的生命

〈第三の生命〉=美的生命



 別の言葉でいうと、次のようになります。


〈第一の生命〉:個別的生命、客観的生命、相対的生命、物質的生命

〈第二の生命〉:普遍的生命、絶対的生命、宗教(精神)的生命、非物質的生命、集団的生命

〈第三の生命〉:間主観的生命、偶発的生命、〈あいだ〉的生命



 あるいは次のような分類も可能でしょう。


〈第一の生命〉:ひとつひとつのいのち、このもののいのち、それ自体のいのち

〈第二の生命〉:すべてのいのち、(個別性を)のりこえるいのち

〈第三の生命〉:あわいのいのち、立ち現われるいのち


「いのちに三つがあるって、いったいどういうことなのか?」と当然、疑問に思われることと思います。


 本章では、このひとつひとつについて丁寧に説明してみたいと思います。


 まずは、〈第三の生命〉とはなにか、というところから始めます。


4−2 〈第三の生命〉──〈いのち〉が立ち現われる


いのちは譬喩なのか

「この絵に描かれた()(とう)には、海のいのちが躍動している」


 とか、

「子どもたちが書いた詩から、幼いいのちの声を感じることができる」


 などという言い方を、わたしたちはときどきしますね。そして他人がそういう言葉をいっても、充分に理解できます(賛成するかどうかは別ですが)


 このときの「いのち」というのは、なんでしょうか。それは、単に()()なのでしょうか。つまり「いのちのようなもの」を「いのち」と呼んでいるにすぎないのでしょうか。


 そうではない、とわたしは考えるのです。「いのちらしきもの」を修辞的に「いのち」と呼んでいるのではない、と考えるわけです。


 わたしの考えでは、それらはほんもののいのちなのです。譬喩ではないのです。


 もちろん譬喩としていっているひともいるでしょうし、譬喩としていう場合もあるでしょう。しかし、そうでない場合もあるのです。


 だが、それはどのようないのちなのでしょうか。


 それが生物学的な生命でないことはあきらかです。描かれた波濤に海の生物学的生命が宿っているわけではありません。つまり、描かれた波濤が生物としての有機体をなしているわけではないでしょう。


 譬喩として、そのような有機体的現象がこの絵には起きている(かのように見える)のだ、と語ることはできます。つまり波の部分が海の他の部分と特別な関係性のもとに動的に結合されており、それがきわめて偶然なことに有機体的な生き生きとした感じを与えているのだ、と語ることはできます。そしてこの偶然さこそ、この絵を描いた画家の才能のもたらしたものだ、というように語ることはできますし、わたしたちはそういう語りに接してもあまり違和感を持たないでしょう。


 しかし、「この絵の波にはいのちがある」とわたしたちが語るとき、ほんとうにそのような譬喩によって、わたしたちと絵とのあいだを(せつ)(ぜん)と分けてしまっているのでしょうか。

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