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ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔
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政治・社会
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終章 ウィルソンを称える人たち

『ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔』
[著]倉山満 [発行]PHP研究所


読了目安時間:24分
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なぜか偉人として扱われるウィルソン


 ここまでお読みいただいたように、ウッドロー・ウィルソンは第二十八代アメリカ合衆国大統領です。一九一三年から二期八年、大統領を務めました。人類にとって不幸な出来事ですが、起きてしまった事実ですから仕方ありません。


 しかもウィルソンが大統領に就任して間もなく、ヨーロッパで起こった揉め事が拡大して第一次大戦が勃発しました。ウィルソンは、この大戦の講和会議で国際連盟の設立を提唱した人として、世界史の教科書に出て来ます。しかも、偉人の如く。


 とりあえず、次の文章をお読みください。



 1913年に大統領になった民主党のウィルソンは「新しい自由」を掲げ、大企業を規制する反トラスト法の強化や関税引き下げ、労働者保護立法などを実施した。対外的には、アメリカ民主主義の道義的優位を説く「宣教師外交」を推進したが、内戦状態にあったメキシコに軍事介入したり、14年にパナマ運河が完成すると、その管理権をにぎるなど、中米やカリブ海地域での覇権を確立した。

(木村靖二、岸本美緒、小松久男ほか六名『詳説世界史 改訂版』三一四頁〈山川出版社、二〇一七年〉)



 1919年1月、連合国代表が集まりパリ講和会議が開かれた。講和の基礎になる原則は、アメリカ合衆国のウィルソン大統領が、18年1月に発表した十四カ条であった。ウィルソンは、ヨーロッパ列強の秘密外交や非民主的な政治を批判し、平和や社会的公平への民衆の願望を受けとめ、自由主義経済のもとで戦争を防止する国際秩序を実現して、ロシア革命の社会主義に対抗しようとした。

(同『詳説世界史 改訂版』三三八頁)



 はい、噓です。どこからツッコミを入れたらよいかわからないほど、噓だらけです。ただ、「新しい自由」「大企業を規制」「労働者保護」「アメリカ民主主義の道義的優位」などと連打されると、なんだか正義の味方に思えてきます。そして、「悪のヨーロッパ」に対する正義の人として描かれています。


 ちなみに「宣教師外交」は、世界史用語集で次のように説明されています。



 いかなる国もアメリカ的理念に導かれるならば、アメリカのような資本主義・民主主義体制を持つことができると説き、その導きを提供するのがアメリカの使命であるとした。この考えは、現代アメリカ外交に大きな影響をおよぼしている。

(全国歴史教育研究協議会編『世界史用語集 改訂版』山川出版社、二〇一八年)



 これを読んだだけでも迷惑な奴としか言いようがないのですが、「ウィルソンは正義の味方」などと刷り込まれた後に読むと、「宣教師外交」は何だか素晴らしいことをしたように思えてきます。


 これは批判する立場でも共有できる評価だと思うのですが、ウィルソンは理想主義者です。ところがウィルソン賛美者は、さんざんウィルソンの道徳的な素晴らしさを説きながら、「中米やカリブで覇権を確立した英雄」として褒め称え始めます。覇権を確立したとは、「暴力で支配した」という意味です。中米でそんなことをする人が、なぜ南北アメリカ大陸以外では急に聖人君子になるのでしょうか。ここの矛盾を教科書はきちんと説明していません。


 実際に覇権を確立されてしまった(暴力で押さえつけられてしまった)中米諸国にとっては、ウィルソンなど大迷惑に他なりません。そもそも、中米諸国にとって、アメリカ合衆国こそ迷惑な存在です。


 そもそも「なんで、お前がアメリカを名乗るんだ!」ですから。知らない日本人が中南米の人の前で「アメリカ」と言おうものなら、「合衆国のことか?」と急に不機嫌になられた、などという例も多々あります。ちなみに私は「合衆国のことか」と聞かれて、「ええ、メキシコではない野蛮な方の」とお答えしたら、急に笑顔になられたことがありました。南北アメリカ大陸で合衆国と訳すのはアメリカ合衆国とメキシコ合衆国だけです。


 それはさておき、「ウィルソンは基本的には外交になど興味がなかった大統領」と聞くと驚く人もいるでしょうか。これはウィルソンに限りませんが、歴代アメリカ大統領は中米やカリブ海地域を「自分の庭」扱いしていました。だから、この地域への関与を「外交」と思っていないのです。本書ではウィルソンの軌跡を追い、この点は少し詳しくお話ししました。ウィルソンも最初はアメリカ大陸限定の迷惑な人でしたが、いつのまにか世界の大迷惑な人になっていくのです。その延長に、現在のアメリカがあるのです。

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