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Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略
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人文・科学
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I 生き物にとって競争とは何か?

『Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略』
[著]稲垣栄洋 [発行]PHP研究所


読了目安時間:38分
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ナンバー1戦略とオンリー1戦略


「世界に一つだけの花」(槇原敬之 作詞・作曲)という歌の中に、こんな歌詞がある。


「ナンバー1にならなくてもいい もともと特別なオンリー1」



 この歌詞に対しては、大きく二つの意見がある。


 一つ目は、「確かにこの歌のとおりである。それぞれがオンリー1なのだから、それを大切にしたほうが良い」という意見である。


 これに対して反対意見もある。

「世の中は競争社会である。オンリー1で良いという甘いことは言わずに、ナンバー1を目指すべきだ」



 あなたは、どちらの意見に賛同するだろうか。



 ナンバー1を目指すべきなのか、オンリー1を大切にすべきなのか。


 じつは、自然界の生き物の世界では、この問いに対する明確な答えがある。


ナンバー1しか生き残れない


「ナンバー1しか生き残れない」


 これが、自然界の生物の世界に存在する唯一の真実である。


 この真実を示す有名な実験がある。


 旧ソ連の生態学者のガウゼは、ゾウリムシとヒメゾウリムシという二種類のゾウリムシを一つの水槽でいっしょに飼う実験を行った。これが「ガウゼの実験」と呼ばれる有名な実験である。


 最初のうちは、ゾウリムシもヒメゾウリムシも数を増やしていく。ところがどうだろう。ヒメゾウリムシは数が一定だったのに対して、一方のゾウリムシは数が減り始め、ついには全滅してしまったのである。




 水槽という限られた空間の中では、二種類のゾウリムシは、生き残りをかけて激しく競い合う。そして、戦いに勝利した者が生き残り、戦いに敗れた者は滅んでしまうのである。


 ナンバー1しか生きられない。これが自然界の厳しいおきてなのである。


 水槽がもっと広ければ、共存できるのではないかと思う人もいるかも知れない。エサがもっと豊富にあれば、共存できるのではないかと思うかも知れない。


 しかし、水槽が広かったとしても、エサが豊富にあったとしても、ナンバー1しか生き残れないという真実は変わらない。


 水槽が広ければ、競争の始まりは遅くなるかも知れないが、やがて、激しい競争が起こる。そして、勝ち残ったヒメゾウリムシが、広い水槽を占有してしまう。


 エサが多かったとしても同じである。勝者が独り占めしてしまうだけなのだ。


 資源が豊富にあれば、共存できるというものでもない。


 自然が豊かであれば、たくさんの生物が暮らすことができるということでもない。


 企業であっても、それは同じだろう。


 利益の高い大きなマーケットがあったとしても、単純にみんなで分かち合うことはできない。何の工夫もなければ、大企業が一人勝ちしてしまうだけのことなのだ。


どうしてさまざまな生き物がいるのか?


「ナンバー1しか生き残れない」


 これが真実だとすれば、不思議なことがある。


 ナンバー1しか生き残れないとすれば、世界にはただ一つの生物しか生き残れないということになる。


 しかし、自然界を見渡せば、ありとあらゆる生き物たちが暮らしている。


 どうして、ナンバー1しか生き残れない自然界に、たくさんの生き物がいるのだろうか。


 じつは、ガウゼの実験には続きがある。


 今度はゾウリムシの種類を変えて、ゾウリムシとミドリゾウリムシという二種類のゾウリムシで同じ実験を行ってみた。


 するとどうだろう。


 驚くことに、二種類のゾウリムシは、どちらも滅ぶことなく、一つの水槽の中で共存したのである。




 どうして、このようなことが起こったのだろうか。


 じつは、ゾウリムシとミドリゾウリムシは、それぞれ異なる性質を持っていた。


 ゾウリムシは、水槽の上のほうにいて、浮いている大腸菌をエサにしている。一方、ミドリゾウリムシは水槽の底のほうにいて、酵母菌をエサにしている。


 つまりゾウリムシは、水槽の上でナンバー1であるのに対して、ミドリゾウリムシは水槽の底でナンバー1だったのである。


 このように、同じ水槽の中でも、ナンバー1を分け合うことができれば、どちらも生存することができる。


 競争を行えば、必ずどちらかが排除され滅びる。これがガウゼの提唱した「競争排除則」である。


すべての生き物がナンバー1である



 ナンバー1しか生きられない自然界に、どうしてさまざまな生き物がいるのだろうか。


 この答えは明確である。


 自然界に生きているすべての生物がナンバー1なのである。


 ゾウリムシの実験がそうであったように、すべての生き物はどこかでナンバー1である。


 そして、そのナンバー1になれる場所は、それぞれの生き物だけのオンリー1なのである。


 ナンバー1が大切なのか、オンリー1が大切なのか。


 その答えもまた明確である。


 自然界に生きるすべての生物はナンバー1である。


 そして同時に、自然界に生きるすべての生物はオンリー1なのである。


 すべての生き物は、「ナンバー1になれるオンリー1の場所」を持っている。


 このナンバー1になれるオンリー1の場所を、生物学では「ニッチ」と呼んでいる。


ナンバー1になれるオンリー1の場所



 ビジネスの世界では、ニッチは「ニッチトップ」や「ニッチマーケティング」という言葉のように、大きなマーケットとマーケットの間の、すき間にある小さなマーケットを意味して使われることが多い。


 しかし、「ニッチ」は、もともとは生物学で使われていた言葉が、マーケティング用語として広まったものである


 ニッチという意味は、寺院や教会の壁などにある装飾品を飾るための掘り込み式のくぼみを意味する言葉である。しかし、やがてそれが転じて、生物学の分野で「ある生物種が生息する範囲の環境」を指す言葉として使われるようになった。生物学では、ニッチは「生態的地位」と訳されている。


 壁にある一つのくぼみには、一つの装飾品しか置けないように、一つのニッチには一つの生物種しかむことができない。


 そして、生物たちはニッチを巡って激しく争い合うのである。


 それぞれのニッチには、そのニッチのナンバー1だけが棲むことを許される。


 ニッチを獲得できなかったものは、滅びてゆく。それが自然界の厳しい掟なのである。


 こうしたたくさんのニッチによって、自然界は埋め尽くされているのだ。そして、たくさんのナンバー1の生き物たちが生態系を構成しているのである。


競争の本質



 生物にとって「競争」とは何か?


 何しろナンバー1しか生きられない厳しい世界である。生物の世界では、常に激しい生存競争が繰り広げられている。


 負けたら滅びるという競争である。どんな勝者であったとしても、連勝に連勝を重ねて勝ち続けることは容易ではない。


 その中で、競争を生き抜くために生物が発達させてきた戦略が「戦わない」という戦略である。厳しい競争を避けることのできない自然界だからこそ、生物はできるだけ戦わない道を選んでいるのである。


 有名なマイケル・ポーターの競争戦略では、競争の基本戦略を、①コストパフォーマンスによる競争、②企業の製品やサービスの差別化、③ターゲット、製品、流通、地域をしぼり込んだ集中、に類型化している。

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