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Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略
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人文・科学
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II 生き物にとって変化とは何か?

『Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略』
[著]稲垣栄洋 [発行]PHP研究所


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多くの種が共存できる理由



 自然界は、ナンバー1しか生き残ることができない。


 生き残るためには、ナンバー1になるためのオンリー1の場所が必要となる。


 それは真理である。


 しかし、自然界を見渡せばあまりにも多くの生物にあふれている。


 たとえば、野原を見れば、さまざまな種類の草花が咲いている。それらの草花は、どれもがオンリー1のナンバー1を分け合っているのだろうか。そうだとすれば、どうして隣どうしで違う種類の花が咲いていたりするのだろう。


 じつは、同じようなニッチにも複数の生物が存在する現象が見られる。


 たとえば、植物はどうだろう。


 植物にとって重要な資源は、光と水と窒素やリンなどの土の中の栄養分である。これは、どの植物も共通である。


 植物は、光と水と栄養分という共通の資源を巡って争いになりやすい。


 もちろん、生息地や季節によって棲み分けることはできるが、動けない植物が限られたエリアに密集すれば、必ず競争は起こる。


 それなのに、野原にはたくさんの草花が花を咲かせ、森にはたくさんの木々が茂っている。


 どうして、このような現象が起こるのか、残念ながら、そのメカニズムの詳細は明らかにはされていない。しかし、一つの要因が関係しているといわれている。


 その要因こそが、「変化」である。



 環境は常に安定しているわけではない。


 平衡状態にある環境に変化が起これば、ナンバー1になれる条件もまた変化する。


 変化が起こる場所では、チャンスが増える。


 特に、ナンバー1以外の弱者にとっては、ニッチの変化はチャンスなのである。



 偶然によって起こることもある。


 たとえば、野原の中に変化が起こると、ニッチが空白となる。


 ニッチが重なるような植物が、安定した条件下で勝ち負けを作るとすれば、どちらかが生き残り、どちらかが滅びる。しかし、環境が不規則に変化し続けたとすれば、どちらが勝つかは偶然性に左右される要素が大きくなる。こうなると、優劣はつけられず、どちらの植物も野原のどこかで咲くことができるのである。


 野原にたくさんの草花が咲くのはそのためであると説明されている。


変化はチャンスは本当か?



 本当に、「変化」のあるところに「チャンス」があるのだろうか。


 一九七八年にアメリカの生態学者コネルは海洋生物の数と環境の変化との関係を調査した。




 このグラフの横軸は、(かく)(らん)の程度、つまり変化の大きさを表している。


 一方、縦軸はその環境で生息する生き物の種数を表している。


 図の右側の部分を見てみよう。


 グラフの右側では、変化が大きくなるほど、生物の種数は少なくなる。たとえば、人間が環境破壊を引き起こすと、生物は絶滅の危機に(ひん)する。


 グラフが右へいけばいくほど、つまり変化が大きくなればなるほど、生息できる生き物の数は少なくなる。これは、よくわかる現象である。変化が大きすぎると、生物は変化に対応できなくなってしまうのである。


 それでは、左側の部分はどうだろう。


 図の左側の部分を見ると、変化が小さくなっても、やはり生息できる生物の種類は少なくなる。


 環境に適応している生物にとって、環境が変化するということは望ましいことではないように思える。変化がないほうが、生物の生存にとっては平穏な環境のはずである。それなのに、変化がない環境でも、生存できる生物の種数が減ってしまうのだ。


 変化がない安定した環境では、生物どうしの激しい競争が起こる。そして、強い者が生き残り、弱い者は滅びていく。そのため、結果的に、生息できる生物の数は減ってしまうのである。


 一方、ある程度、変化がある条件では、必ずしも強い者が勝つとは限らない。


 攪乱によって環境が変化し、さまざまな環境が生まれる。このような複雑な環境がたくさんのニッチを生み、厳しい競争社会では生存できないような、多くの種類の弱い生物が生存の場を得ることができるのである。そのため、攪乱があるほうが、生息できる生物の種類は増えるのである。


 つまり、この図は、安定した環境よりも、変化のある不安定な環境のほうが、多くの弱者にとってチャンスがあることを示しているのである


 これが「中程度攪乱仮説」と呼ばれるものである。


 強すぎず、弱すぎずという中程度の変化が起こることは、多くの生物にとってチャンスを増やすのである。


進化の袋小路



 インドネシアにバビルサというイノシシがいる。


 イノシシは、下のあごから上向きにキバが生えているが、このイノシシはずいぶんと変わっていて、下あごだけでなく、上あごにもキバがある。このキバは上あごから上向きに伸びていって、上あごの皮膚を突き抜けて、伸びてくるのだ。


 それだけでも十分に不思議なのに、さらにバビルサのキバはカーブを描きながら伸び続ける。そして、湾曲しながら伸び続けたキバは、ついには自分のほうに向かって伸びてくる。それでも、キバは伸び続け、場合によっては()(けん)の皮膚を突き刺し、骨を貫いてしまうことさえあるのだ。




 自らを傷つけるような、危険なキバは何のために進化したのだろうか。


 キバは、戦うための武器である。キバが短いよりも、キバが長いほうが有利である。そのため、バビルサはより長く、より長くと「長いキバ」を目指して進化を遂げたのである。


 その結果、「無用の長物」とも呼べるような長い長いキバが発達したのである。



 マンモスのキバも立派だが、大きく曲がっているので、敵を攻撃する役には立ちそうにない。

「キバは大きいほうが強い」「キバは大きいほうが有利である」


 それは、間違いないが、キバを大きくするだけの方向に進化が進んでしまい、ブレーキが効かなくなってしまったのである。


 どうして、このようなことが起こるのだろう。


 自然界では、環境に適したものが生き残る。これが自然選択である。しかし、自然環境以外にも()り好みをするものがいる。


 オスのバビルサやマンモスにとっては、それがメスである。メスに選ばれたものは子孫を残し、そうでないものは子孫を残すことができない。これは性選択と呼ばれている。


 長いキバを持つオスは強い。そのため、キバの長いオスはメスにもてる。しかし、キバが長いというメスの好みがいきすぎると、進化の方向さえ間違えてしまうのだ。


 クジャクのオスが不必要に立派な羽を持っているのも同じ理由だ。クジャクの立派な羽は、環境を生き抜く上で何の意味も持たない。しかし、派手な羽を好むメスたちが、あの無用な羽を持つオスのクジャクを作り出しているのである。


 このようなメスの選り好みによって進化が起こることは「ランナウェイ説」と呼ばれている。日本語では「暴走進化説」。ランナウェイとは制御不能という意味なのだ。


 マーケティングの世界でいえば、選択を行うのは顧客だろう。


 優れた商品が生き残るだけではなく、顧客が好む商品が生き残る。


 しかし、消費者が正しいとは限らないし、何しろ顧客の好みは常に移うものだ。


 後から思えば、どうしてあれが受け入れられたのかわからないような、おかしな流行やブームが湧き起こることもある。


 ビジネスを展開する上では顧客に選ばれることは大切である。時にはブームに乗ることも必要かも知れない。しかし、顧客が常に正しい進化に導いてくれるとは限らないのである。



 前述した、ダーウィンの有名な言葉がある。



 もっとも強い者が生き残るのではなく、もっとも賢い者が生き延びるのでもない。


 唯一生き残ることができるのは、変化できる者である。


 この言葉はビジネスの場面でもよく用いられる。


 生き残ることができるのは、変化できるものなのだ。


 そして、何が何でも変化すれば良いというものではない。「変化する環境」に対応して、「正しい変化」をすることが大切なのだ。

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