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Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略
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人文・科学
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III 生き物たちのオンリー1戦略

『Learned from Life History 38億年の生命史に学ぶ生存戦略』
[著]稲垣栄洋 [発行]PHP研究所


読了目安時間:1時間0分
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生き物たちのコア・コンピタンス戦略


「ナンバー1になれるオンリー1の場所」


 この生き物のニッチ戦略は、ビジネスの世界の「コア・コンピタンス」や「ランチェスターの弱者の戦略」を思わせる。


 競争社会で勝ち抜くためには、「選択と集中」に尽きる。つまり、「無駄な戦いは避けて戦わず、ナンバー1になれそうな場所で勝負をする」ということである。


 コア・コンピタンスは、ゲイリー・ハメルとプラハラードが提唱した概念であり、ライバルに負けることのない企業の核となる能力を言う。


 生き物たちの世界では、戦いや競争に強い者が勝者になるわけではなく、生き残った者が勝者である。


 そのため、この世に存在しているすべての生物は、自らの強みを活かしナンバー1となるオンリー1のニッチを見いだしているのである。それでは、生き物たちは、どのようにして自らのポジションを確保しているのだろうか。


 どのように他の生物と差別化しているのか、どのようにして強みを発揮しているのかに注目してみたい。


ナンバー1しか生き残れないのか?



 本当にナンバー1しか生き残れないのだろうか。ナンバー2も生き残れるのではないかと思うかも知れない。


 たとえば、クワガタムシはどうだろう。


 森の王者はカブトムシかもしれないが、クワガタムシも森のナンバー2として君臨しているように見える。


 しかし、残念ながらそうではない。


 クワガタムシもまた、ナンバー2ではなく、ナンバー1として生きていいのだ。


 カブトムシとクワガタムシは活動時期がずれている。夏の暑い時期にはカブトムシが活動をするが、クワガタムシはカブトムシと活動時期をずらすように、もう少し涼しい季節や涼しい地域で活動するのである。




 つまり、あくまでもカブトムシのいない環境でのナンバー1なのである。


 もちろん、カブトムシとクワガタムシの活動は、完全に分かれているわけではないので、カブトムシとクワガタムシがエサ場で出くわすこともある。


 しかし、カブトムシとクワガタムシが豪快に戦ったり、カブトムシが豪快にクワガタムシを投げたりすることは稀で、大概は、カブトムシと出くわせばクワガタムシは逃げていく


 カブトムシは角でクワガタムシを投げ飛ばすことができるが、クワガタムシは大きな顎ではさんで、たとえカブトムシの固い装甲に穴を空けることができたとしても、カブトムシを撃退することはできない。


 クワガタムシもまた、ナンバー2では生きていけないのである。


ナンバー2という戦略



 自然界ではナンバー1でなければ生き残ることができない。


 しかし、人間の世界はナンバー2であっても、生き残ることはできる。オリンピックであればナンバー2は銀メダリストとして称えられる。


 そのため、人間の世界では「ナンバー2」という存在が価値を持っているのが面白いところだ。


 たとえば、カブトムシにやられっぱなしのクワガタムシは、もし同じニッチで戦っていたとすれば、存在することができない。しかし、人間にとってはクワガタムシはカブトムシの永遠のライバルとして人気がある。


 世の中には、一番が嫌いな人もいて、巨人という強い球団があると、「アンチ巨人」という集団もできる。


 シェアが一位の商品に対しては、シェアが二位の商品も人気を保つのである。


ナンバー3の戦略



 クワガタムシでさえもかなわないとすれば、もっと弱い昆虫たちはどうすれば良いのだろう。


 これは、もうまともに戦ってはいけない。ナンバー1とナンバー2がしのぎを削って戦っている土俵から、早く逃れなければならないのだ。


 そして、激しい勝負が行われている土俵の外にこそ、勝機があるのだ。


 カナブンもまた、カブトムシやクワガタムシと同じように木の樹液に集まる昆虫である。カナブンはカブトムシにもクワガタムシにもかなわない。そのため、カブトムシやクワガタムシが夕方から朝にかけて活動するのに対して、カナブンは昼間にエサ場に集まる。


 もちろん、カブトムシやクワガタムシが夜に活動をするのには理由がある。


 昼間は天敵の鳥がいるので、鳥のいない夜を選んで活動をしているのである。


 カナブンの活動する昼間は、カブトムシはいないが天敵の鳥がいる。


 そのため、カナブンはキラキラと輝く羽で鳥を惑わし、身を守るように工夫している。


 自分のいるポジションによって、取るべき戦略が異なってくるのだ。


地域ナンバー1戦略



 ライオンとトラはどちらが強いだろうか。


 夢のような対決だが、残念ながら自然界でライオンとトラが戦うことはない。


 ライオンが生息しているのはアフリカや西アジアのサバンナである。一方のトラは、ユーラシア大陸東側の森林地帯だ。地域も環境も異なるから、ライオンとトラとは出会うことができないのだ。


 自然界では、ライオンとトラは、戦うことはありえないし、戦う必要もない。




 いや、もしかするとライオンの祖先とトラの祖先は、戦いの末に、それぞれがナンバー1になれるニッチを分け合ったのかもしれない。


 いずれにしても、ライオンやトラのような強い動物でさえも、ナンバー1になれる地域だけで暮らしている。このような限られたエリアでナンバー1になることは、ナンバー1でいられる有効な手段なのだ。


 ネコ科の肉食獣というニッチでは、たとえば北アメリカの岩場にはピューマがいるし、南アメリカのジャングルにはジャガーがいる。


 それぞれ生息場所や生息環境が異なるのだから、どちらが強いとか、差別化を意識する必要はまったくない。ライオンがトラの縞模様を気にする必要はないし、トラがライオンのたてがみを欲しがる必要もない。ライオンはサバンナに、トラは森林に適応していけば良いだけの話だ。



 テーマパークといえば、東京ディズニーランドとユニバーサルスタジオジャパン(USJ)がライバル視される。かつてUSJは「ディズニー」の世界観に対して、ハリウッド映画の世界観を前面に出して差別化を図っていた。そして、東京ディズニーランドがファミリー層や若年層に人気があるのに対して、こだわりのある大人をターゲットとして棲み分けようとしていたのである。


 しかし、首都圏にある東京ディズニーランドと、関西圏にあるUSJとでは、そもそも商圏が異なる。そこでUSJは、東京ディズニーランドと差別化することなく、ファミリー向けのエリアを作り、子どもに人気のキャラクターも次々に登場させた。そして、ハリウッド映画にこだわらず誰もが楽しめるエンターテインメントパークを目指したのである。


 その結果、赤字だったUSJはV字回復し、その人気は東京ディズニーランドをしのぐほどになっている。さらに最近では楽しむことに()けた大阪らしさも出しながら、エンターテインメントに磨きをかけている。


 USJは「ハリウッドらしさ」ではなく、「大阪らしさ」で勝負して成功したのである。


 ハウステンボスもV字回復を遂げたテーマパークである。


 東京からのアクセスが不便という不利な立地で集客の伸びなかったハウステンボスだが、アジアからはとても近い位置にある。その立地を活かしてアジアからのインバウンドの観光客で賑わっている。ハウステンボスはオランダの町並みを模した景観が特徴だが、アジアの人々にとっては、ヨーロッパはまだまだ遠い国である。そのヨーロッパの雰囲気を気軽に体験できると人気なのである。現在では、アジアの観光客を意識して、海外でも人気のアニメの世界観を取り入れるなど、工夫している。


 このように商圏が異なれば、競う必要はない。


 ライオンとトラは戦う必要がないのである。


地域を絞る



 ナンバー1になるためには、エリアを絞り、ライバルとなわばりをずらすという方法も効果的だ。


 生き物の世界では、地域によって暮らしている生き物が違うということが多い。


 たとえば、日本の本州にはツキノワグマ、北海道にはヒグマがいる。


 北アメリカに行けばアメリカグマがいるし、東南アジアに行けばマレーグマがいる。北極にはホッキョクグマがいる。地域によって種類が決まってくるのだ。


 あるいは、先述のトラもシベリアから熱帯アジアまで分布域は広いが、寒帯にはアムールトラがおり、インドネシアの森林にはスマトラトラ、インドにはベンガルトラが生息している。これらのトラの種類は、同じトラという生物種ではあるが、地域の環境に合わせて少しずつ変化しているので「亜種」として区別されている。


 広い範囲で君臨しているトラも、地域のナンバー1になるためにカスタマイズしているのだ。


 カップうどんやカップそばなどのインスタント食品やコンビニの(そう)(ざい)などは、地域によって味を変化させることがあるが、地域を絞るということは、もっとも簡単な絞り方だ。


 Jリーグが良い例だろう。


 人気の高かった野球に比べて、あまり人気のなかったサッカーは、地域に根ざした球団作りを目指した。そして、プロ野球球団のなかった地方都市に次々とプロのクラブを作っていったのである。今や、JリーグはJ1からJ3まで五五クラブ。Jリーグ入りを目指すクラブもたくさんあって、各地で盛り上がりを見せている。すべてのクラブが地域でナンバー1なのだ。


 かつてプロ野球は巨人を中心として、東京の巨人に対抗する関西の阪神タイガースや名古屋の中日ドラゴンズ、広島カープなどはまだ人気があったが、ヤクルトスワローズや大洋ホエールズなどの首都圏の在京球団は、巨人の陰に隠れていた。ましてやパ・リーグは球場に(かん)()(どり)が鳴く始末だった。


 しかし、パ・リーグの日本ハムファイターズは北海道に拠点を移し、東北には東北楽天イーグルスが誕生した。また、在京軍団と呼ばれていたチームも千葉ロッテマリーンズや埼玉西武ライオンズというように、地域の球団となって人気を得ている。


「地方再生」や「地方創生」という言葉が飛び交い、何か、地方というのが不利で恵まれない存在のように思う方が多いかもしれないが、そうではない。ナンバー1を目指すのであれば、いきなり全国を目指すよりも、地方や地域でナンバー1を目指すほうがよほど効果的だ。


 今や全国的に有名なブランドも、最初は地域ナンバー1だったということは、珍しくないのである。


「限定」で勝負する



 もっと、地域をしぼり込んだらどうだろう。


 エリアを絞れば活路が見えてくる。


 業界トップの年商一〇〇〇億円「なんでも酒やカクヤス」の始まりは小さな酒屋だった。


 大規模なディスカウントストアが進出してくるが、価格では勝つことができない。大型の駐車場もなければ、品揃えのある大量陳列もできない。


 カクヤスの敷地は四〇坪しかなく、車の出入りもしにくい立地だったのである。


 大きさで勝負できないのであれば、小ささで勝負である。


 カクヤスは自転車で配達ができる一・二キロメートルを配達範囲として、「二時間以内に一本から無料で配達」を始めた。このようなきめの細かいサービスはとても大量販売をする店では、マネをすることができない。

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