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小部隊指揮官バイブル いかに部下を統率し、目標を達成するか?
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POINT1-1 毅然たる態度

『小部隊指揮官バイブル いかに部下を統率し、目標を達成するか?』
[著]柘植久慶 [発行]PHP研究所


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 指揮統率は実に興味深いものである。一〇〇万の言語を費やした立派な訓示も、指揮官が卑劣な振舞いをしたことにより、すべてが()(ゆう)に帰してしまう。


 下級指揮官は統率する人数が少ないだけに、直ぐに部下たちから性格まで見抜かれる。何しろ部下の方が圧倒的に目の数が多いから、誤魔化しがきかないのだ。


 とりわけ下士官──曹長から軍曹といった階級の者は、軍歴が少尉や中尉クラスよりも長く、軍隊の裏を知り尽している。この階級の者と上手く人間関係を築くには、やはり会話を多くするのが一番であろう。


 小隊以下の小部隊──分隊や班は、そうした下士官あるいは()(ちよう)が指揮する。伍長は文字どおり中国語からの直訳で、五人を率いたので「伍長」と呼ばれた。一〇人を率いたら「(じゆう)(ちよう)」である。このあたりの指揮官は下士官か伍長と考えてよい。


 いずれにせよ部下を率いる立場の指揮官は、まず()(ぜん)とした態度が求められる。リーダーシップはまず、態度で示す必要があるだろう。


 自分に甘い指揮官のなかには、徹底して手を抜く者がいる。こうした(たぐい)の連中はいざ実戦に臨むと、たいていは行軍にも遅れがちとなる。


 戦場では脚力といかに過重負担に耐えられるか、これら二点が生存のための重要なポイントとなってくる。いったん敵中で行動し始めると、歩けなくなったら最後一人の落伍者が、部隊全体の運命を左右してしまう。


 こうしたときコンバット・リーダー、すなわち戦闘部隊の指揮官が、先頭に立って平然と作戦の主役を演じるのは頼もしい。部下たちもその一事だけ見て、この指揮官の下なら大丈夫ではないか、との信頼感を抱く。


 第一線の指揮官は、(すみ)やかな決断を求められる。熟慮の末という余裕などまずない。孫子も「兵聞拙速」──戦いはたとえ拙劣でも速い決断が大事、と指摘している。


 すなわち目前にある出来事が展開されたとしたら、次の段階にどうなるかの予測を加えた上で、速やかな対策を講じねばならないのである。(しばら)くして状況に変化が生じた場合には、またそこで別の決断を下してもよい。


 それをせずに部下たちを待たせ、何も指示命令の類を発しないのが一番いけない。部下たちはそのことを慎重なのでなく、指揮官の決断力の鈍さと評価するかもしれないためだ。


 いったん不信感が生じると、それを(ふつ)(しよく)することは極めて困難になる。新たに確立するより数倍の努力を要し、それでいてようやく元の位置に戻るに過ぎない。そんなことなら速やかに一つの結論を出しておき、状況の移り変わりにつれて、微調整してゆけばよい。


 これが戦場でなく、後方においてだとしたら、そんな楽なことはない。部下から質問があり熟慮を要するときには、朝なら夕刻、午後なら翌朝一番に来い、と応じておく。このやり方なら決して逃げたことにならず、相手も納得するからである。


 戦場ではまた違ってくる。分(きざ)みあるいは秒刻みで状況が変化してゆくので、目の前の(しん)(ちよく)とわずかな手元の情報で以て、即断を下すのだ。それ故、普段からそのような訓練をしておく必要があるだろう。


 私が常日頃言っていることだが、頭のなかにいったん回路を設けておけば、(とつ)()の場合に即応できるという点を忘れないで欲しい。人間は初見の物事に対して、正確な判断を下すのが極めて難しい。しかしながら回路が存在すると、それを瞬時に連絡させればよいわけだから、更地状態と大違いだと言える。


 一つの作戦行動については、良好──順調な進捗、普通──(こう)(ちやく)状態、そして不可──劣勢状態という三つに大別される。一番上に最良があるが、そのような戦闘は流れにまかせればよいから、あまり時間を()いて考える必要などない。


 良好な状態にしても、味方が兵力的に優勢か、それとも地形などで有利だか、頭で考え過ぎない方がよい。これもまた敵の増援が出現しない限り、流れを変えずに攻撃続行なのだ。


 膠着状態はまた後述するが、これも無理に状況を崩す必要はないだろう。敵が無理してくるのを待てば、そこを突き崩して勝機を簡単に得られる。


 一番真剣に考えておくことは、やはり劣勢状態に(おちい)った際の対策である。小部隊では予備兵力など用意していないから、指揮官自身も銃撃戦に加わる事態まで、視野に入れておかねばならない。


 そうした事柄を常日頃から、指揮官たる者は頭の片隅に置いておく。仮定の戦況をでっち上げておき、それに対応する手段を、次から次へと考えてゆく。戦況の設定を変えれば、また新しい展開が(ひら)ける。


 どうしても解決手段──離脱が難しいようなケースは、そういった状況に追いこまれない展開を考える。つまり事前にそのような事態を招かない対策を講じてゆく。


 そのあたりは指揮官の戦闘の運び方一つで、いかようにも変化が可能となってくる。これは先手を打ってゆくことにより、自分の考えている戦いを招来するわけである。逆に後手を踏んでしまうと、抜きさしならない状況下に身を置く破目になるのだ。


 指揮官は常に人目に(さら)される。その一挙手一投足は、部下だけでなく同じ指揮官クラスにも、注目されていると考えて間違いない。上官たちもまた、部下の能力を見定める関係上、さりげなく視線を注いでいる。


 部下の能力を十二分に掌握しておかないと、どういった局面で誰の部隊を投入するか、判断を誤まることも起こりかねない。下級将校でも下士官でも、それは同じことであろう。中隊長は小隊長クラス、小隊長は分隊長クラス、そして分隊長は班長クラスの、その能力を把握しておく必要がある。


 部下たちに判定を下すとき、戦闘の際の能力だけに基準を合わせると、それは少し違ってくると思われる。戦闘には強いが観察力に劣るとか、その逆があったりするので、TPO──時・場所・場合によっての部下の使い分けをせねばならない。


 そして命令を下すときには、ここでも毅然たる態度が求められてくる。それが指揮官の役割なのだ。

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