『マネジメントの悩みがスッキリ解消 「理系リーダー」の教科書(大和出版)』
[著]晴瀬ワカル
[発行]PHP研究所
理系人間には、一定以上の割合で
コミュニケーションを苦手としている人がいます。
かくいう私自身、子どものころからコミュニケーションが大の苦手。
そんなことから、初めてリーダーになったときはメンバーとの
意思疎通がうまくいかずに半年で挫折します。
しかし、そんな私が、いろいろな気づきを得たことで、最終的には
約20名のプロジェクトのリーダーを任されるまでに──。
この章では、私に起こったことを時系列で見ていくことにしましょう。
「はじめに」でもお話ししたように、私はある電子機器メーカーにて、設計の仕事をしています。
いまでこそ約20名ものプロジェクトのリーダーを務めるまでになった私ではありますが、初めてリーダーになったときには、本当に苦しい思いをしたものです。
入社して10年くらいは、チームのメンバーとしてそれなりに充実した日々を送っていました。
「どうやって、〇〇の機能をこの製品に入れ込もうか?」
いろいろなアイデアを頭のなかでめぐらせ、パズルがパッと解けた瞬間には、何とも言えない充実感がありました。
しかし、あるとき、プロジェクトのメンバーが増えることになり、そのまとめ役として2人のメンバーのリーダーを私がやらなければならなくなってしまったのです。
当時の私は、人とコミュニケーションをとることが得意ではなく、リーダーには全く向いていない人間だと思っていました。
ですから、自分がリーダーをやるということなど考えてもいませんでした。
ところが、そんなことはおかまいなしに、上司から呼ばれてリーダーをやることになってしまったのです。
私は、
「リーダーはメンバーに仕事をテキパキと振って、チームの先頭に立って、どんどん引っ張っていくべきだ」
と思い込んでいました。
そこで、まずはメンバーに仕事を振っていこうとしたのですが、そもそもメンバーにどんなふうに話しかけたらいいのかも、よくわかりません。
「いっそのこと担当分けなどせず、自分でやってしまったほうがどんなにラクだろう」
そうは思ったものの、それでは仕事が回っていかないので、どうにかメンバーにお願いして、担当ブロックごとに仕事を割り振っていったのです。
その後、私はどんどん指示を与えていきました。
メンバーの手が少しでも止まると、「成果が出なくなる。時間をムダにしてしまう」という焦りが自分に襲いかかってきます。
ですから、1つの指示が終わると、次にどんな指示を出さなければならないかを考え、すぐに次の指示ができるよう、かまえていました。
ところが……。
2人いたメンバーはテキパキと仕事をこなす人たちだったので、私の指示がだんだん追いつかなくなっていったのです。
そのうちに、「言われるとおりにやりますから、早く指示してください」と、逆にメンバーたちから迫られる始末。
でも、焦れば焦るほど、自分の頭が回らなくなってきて、ついには指示ができなくなり、メンバーのやることがなくなってしまいました。
こうなると、悪循環そのもの。
だんだん私自身にもストレスがたまってきて、体が思うように動かなくなってしまったのです。
そして、いつしか自分が追い詰められる夢を見るようになっていきました。
ついには、「もうダメだ」と自分の限界を認めざるを得ない状況に──。
上司は何度も助け舟を出してくれていましたが、私は「これ以上、迷惑をかけられない」と感じて、「もう、リーダーはムリです」とギブアップしました。
こうして、私は初めてのリーダーを半年で自ら降りることになったのです。
●POINTキャリアを積むと、だれもがリーダーになる日がやってくる